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「ヴァレリー・ゲルギエフ(1953〜)」 コーカサス地方のウラジカフスカ生まれ、名教師ムーシンに師事、77年カラヤン指揮者コンクール1位なしの2位。アルメニア国立響の首席指揮者を経て、88年キーロフ歌劇場の芸術監督に就任、短期間で劇場改革を実現し大幅に水準を上げました。 1995年からロッテルダムフィルの首席指揮者も兼任。 ・サンクトペテルブルク・キーロフ歌劇場管弦楽団 (1997年7月4,6-7日フィンランド、ミッケリ、ミカエリ・ホール スタジオ録音) ズシンとした重低音、消え入るようなピアニシモから凄まじい爆発を見せるフォルティシモまで、ロシア的なアクの強さの中に西欧風の洗練さも見せたゲルキエフならではの「悲愴」でした。 特に熱い響きと張り詰めた緊張感を孕んだピアニシモの後に来るフォルティシモの対比は実に鮮やかで、第1楽章展開部など実に見事なものです。 各主題をテヌート気味に弾かせ、第2楽章の終結部などかなり粘ります。ダイナミックで彫りが深く、同世代の指揮者の中では傑出した才能の持ち主ですが、聴いていてある種の毒を感じるのも確かで、ゲルギエフの演出のパターンが聞き手に見えてしまう一面もあると思います。 「ミハイル・プレトニヨフ(1957〜)」 アルハンゲリスク生まれ。ピアニストとして名高く、1978年チャイコフスキー国際コンクールでは優勝しています。指揮者としてのデビューは1980年。 90年には私財を投じロシア初の民間オーケストラ、ロシア・ナショナル管弦楽団を組織。団員を好条件で公募した結果、モスクワやサンクトペテルブルクの優秀なオーケストラメンバーが多数引き抜かれることになりました。チャイコフスキーは交響曲全集を完成しています。 ・ロシア・ナショナル管弦楽団 (1995年 9月 モスクワ音楽院大ホール スタジオ録音) このコンビが来日した時の舞台写真を見たことがありますが、オーケストラの独特の配置が特徴で、舞台の正面向かって左側にベースをはじめとした弦楽器を集中配置し、右側には金管楽器を中心とした管楽器を配するというもので、かつてストコフスキーが実験的に行ったのを見たことがありますが、最近の指揮者でこれほど大胆なオーケストラ配置を見たことがないので驚きました。 演奏は引き締まったかちっとまとまったもの。速いテンポで全曲を通した現代的なスマートな演奏です。独特の楽器配置ですが聴いていて違和感は感じられません。 プレトニヨフのピアノの演奏に通じた、ある種強い芯のある硬質な演奏だと思います。
(2003.06.12)
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