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今回も、ハンガリー出身でバルトーク門下のライナーとドラティの悲愴です。 「フリッツ・ライナー(1988〜1963)」 ブタペスト生まれ、リスト音楽院でバルトークらに学び、リュプヤナ歌劇場からキャリアをスタート、ドレスデン国立歌劇場の指揮者時代にはニキシュ、マーラー、R.シュトラウスといった音楽史上の巨匠の薫陶を受けました。その後アメリカへ渡り、シンシナティ響、ピッツバーグ響の音楽監督。1953年にシカゴ響の音楽監督となり、このオケを世界最高の水準に引き上げています。 ・シカゴ交響楽団、 (1957年 4月16,17日 シカゴ オーケストラホール スタジオ録音) ライナーのチャイコフスキーは比較的珍しく、交響曲の録音は「悲愴」だけだったと 思います。シカゴ響との演奏会でも4回しか取り上げていません。 いつもの調子の余分なものを削ぎ落とした筋肉質の演奏を予想していましたが、意外にもモーツァルトのような軽やかさを随所に散りばめた演奏でした。 ライナーには「くるみ割り人形」の名演もあり、その延長線上の演奏のように思います。 特に前半二つの楽章の、軽い金管楽器の響きが印象に残りました。 デッドなシカゴオーケストラホールの響きのためか、ロマンティックな甘さは皆無、後半2楽章は、大きな広がりを持たせながら冷静にこなしていくいつもながらのライナーの着実なお仕事。ただ中身は非常に濃いのですが、遊びがなく面白みに欠けるような気がします。チャイコフスキーの音楽はライナーの芸風には合わないのかもしれません。これが第4番のような曲ならば素晴らしい演奏になったと思います。 「アンタル・ドラティ(1906〜1988)」 ブタペストに生まれ、リスト音楽院にてバルトーク、コダーイに学ぶ、ドレスデン国立歌劇場にてフリッツ・ブッシュの弟子といったライナーと同じような経歴の持ち主のドラティには、ロンドン交響楽団によるチャイコフスキー交響曲全集があります。 ・ロンドン交響楽団 (1960年 6月17、18日 ロンドン ウェンブリータウンホール スタジオ録音) ステレオ初期マーキュリーリビングプレゼンスシリーズの名録音。 楽譜に書かれた全ての音がクリアに鳴り響いた、明快にして感傷を排除した演奏。 第1楽章140小節のインカルランドあたりから次第にテンポを上げて第2主題に突入する演奏が多い中で、ドラティの演奏は同じ個所から次第にテンポを遅くしていくユニークなものでした。その一方で、第3楽章では微妙にテンポを上げながら229小節の全合奏部分ではテンポをがくんと落とす古典的な手法を採用。 第4楽章の彫りの深い盛り上がりも充分な、ドライでありながら無味乾燥に陥らない全てを知り尽くした大人の音楽。
(2003.06.06)
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