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「惑星」を聴く8・・・カラヤン

「ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908〜1989)」
20世紀指揮界の帝王カラヤンは、「惑星」を2度録音しています。
第一回目は、カラヤンの専属がEMIからグラモフォンに移行する時期の録音で、ウィーンフィルとイギリスデッカに残した一連の録音の1枚。この時「オテロ」「アイーダ」といったオペラの名盤や、カラヤン得意のR.シュトラウス、ベートーヴェン、ブラームスなどの録音に混じって、「清しこの夜」といったクリスマス・アルバムや「惑星」アダンの「ジゼル」など、およそカラヤンらしからぬ録音が行われました。

・ウィーンフィル、ウィーン国立歌劇場合唱団
(1961年 9月、ウィーンソフェンザール、スタジオ録音)
ステレオ録音では、ボールト、サージェント、ストコフスキーに次ぐ録音。
この録音の存在によって、「惑星」がローカルな曲から一挙に有名曲となり、その後イギリス人以外の指揮者による数多くの録音が行われる引き金となりました。
カラヤンのイギリス音楽は非常に珍しく、ホルストのほかにはブリテンとヴォーン・ウィリアムスを1曲ずつ若い頃にモノラル録音をしているくらいです。
なぜこの時期にカラヤンが「惑星」を録音したのか疑問に思っていましたが、ウィーン国立歌劇場バレエの公演演目を調べてみたら、ちょうどこの1961年のシーズンのプログラムに「惑星」がバレエ演目!として出ていました。ちょうどこの数年前にボールトがウィーン国立歌劇場管弦楽団を振ってステレオ録音を行っていますが、どうもこのあたりで「惑星」を演奏する下地がウィーンでは出来ていたようです。
このカラヤンの演奏は、ウィーンフィルを思いきりドライヴした熱気溢れる豪快なもの。特に「火星」ではオケを思いきり鳴らした爽快な演奏となりました。名手ボスコフスキーのヴァイオリンソロが美しい「金星」や豊麗な「木星」など、じつにグラマラスな演奏です。バレエ演目として準備されていただけあって、なんとなく舞踏を意識した軽やかなテンポ運びのように思えるのは、気のせいでしょうか。

・ベルリンフィル、RIAS室内合唱団
(1981年、1月、3月 スタジオ録音)
デジタル時代のカラヤン2度目の録音。プルトの端っこの演奏者まで名手を揃えたベルリンフィルの威力をまざまざと見せつけたゴージャスな演奏。弱音の精密な音程と、強奏での凄まじい響きなど、聴いていてただただ圧倒されます。特にオケを思いきり鳴らした“火星"は出色。また“金星"“海王星"でのさまざまな弦楽器パートがピアニシモの中で同じ曲想を受け渡す部分の移り変わりの自然さは、実に見事なものです。
ただ速いテンポの“木星"は、中間部でノンレガートの譜面の指示に従うあまり、どうも不自然な歌い方となってしまって、ある種空虚な印象を受けるのも事実です。
イギリスの指揮者と異なり、カラヤンは作品に対して一定の距離を置いて冷めた目で見ているように思えました。
またこの録音では、“火星"のユーフォニウムソロがひっくり返ったり、“天王星"でオルガンが異様に大きかったりと一部録音バランスにおかしな部分があり、編集が雑な印象を受けました。(最新のリマスター盤では改善されているらしい)


(2002.08.25)
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