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「惑星」を聴く9・・・スタインバーグ、ジュスキント、マッケラス

今回は、地味ながら着実な仕事を残した実力者三人の「惑星」

「ウイリアム・スタインバーグ(1899〜1978)」
ケルン生まれ、ケルンやフランクフルトとオペラハウスで指揮者を務めた現場叩き上げの指揮者。ユダヤ系のため、イスラエルフィルの設立に尽力し、初代指揮者となり、その後渡米し、バッファローフィル、ピッツバーグ交響楽団の音楽監督、特にピッツバーグ響時代は数多くの録音を残し、ベートーヴェンやブラームスで正統的な名演を残しました。ボストン響の音楽監督も短期つとめ、いくつかの録音を残しています。

・ボストン交響楽団、ニューイングランド音楽院合唱団
(1970年 9月 スタジオ録音)
細部の描き分けとスケールの大きさが見事なバランスを保った素晴らしい演奏だと思います。第一拍に強く叩きつけるようなアクセントをつけた野生的な“火星"、この速いテンポは作曲者の自演盤に限りなく近いテンポです。オケを壮麗に鳴らした“木星"も、カラヤン盤のような空虚さはなく、中間部の旋律も暖かな共感に満ちたものです。“土星"のスケールの大きな奥深い表現、“海王星"の神秘的な合唱の扱いなど、ボストン響の実力をうまく引き出した名演だと思います。

「ワルター・ジュスキント(1918〜1980)」
プラハ生まれ、ピアニストとしてデビュー、後に指揮者に転向し、メルボルン響、トロント響、
セントルイス響の音楽監督を歴任した、職人的な手堅さを持った指揮者。
アマチュアのオケもしばし指揮をし、ジュネスのオケを振ったドヴォルザークの第8番は熱のこもった素晴らしい演奏でした。

・セントルイス交響楽団、ミズーリーシンガース
(1974年 9月 スタジオ録音)
おそらくオリジナルは、当時流行となっていた4チャンネル録音で、通常のステレオで聴くと焦点がぼやけた締りのない響きとなってしまっています。
“火星"の最終小節にドラの一発を加えるなど、オーケストレーションに幾分手を加えていて効果を狙った演奏ですが、数多くの競合盤に比べると、ジュスキントの指揮はリズムが重く、幾分個性に欠ける演奏でした。

「チャールズ・マッケラス(1925〜」
アメリカ生まれのオーストラリア人、シドニー交響楽団のオーボエ奏者から指揮者に転向、プラハで名指揮者ターリヒに指示しました。特にヤナーチェクのスペシャリストとしても有名ですが、近年はモーツァルトやブラームスの交響曲全集など、最新の研究成果を取り入れた格調高い録音を残しています。

・ロイヤル・リヴァプールフィルハーモニック、女声合唱団
(1988年6月 スタジオ録音)
オケを充分に鳴らし、旋律をよく歌わせたベテランの音楽。録音も素晴らしく、オルガンのペダル音もバランス良く再生されます。
響きが純粋で、清潔感を感じさせる演奏で、“金星"の美しさ、愉悦感に満ちた“木星"など、実に見事なものだと思いました。

(2002.08.29)
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