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今回は来日経験もある、イタリアのベテランオペラ指揮者の演奏を紹介します。 「アルジェオ・クアドリ(1911~)」 イタリアのコモ生まれ、1951年スカラ座デビュー、50年代末からウィーンを中心に活躍。73年以後たびたび来日し、東京フィルの名誉指揮者。 ・ ウィーン国立歌劇場管弦楽団 (1950年代後半 スタジオ録音) クアドリが主に活躍の場としていたウィーンのオケとの録音。 ここでのウィーン国立歌劇場のオケは、響きがプアーでアンサンブルもお粗末、 おそらくフォルクスオパーのオケだと思います。 クアドリの指揮は歌謡性を重視し、どちらかといえば音を揃えようとする意思が感じられない アバウトなもの。「カタコンブの松」の低音部の蠢くトロンボーンの不気味さとじっくりと歌わせた「ジャンコロの松」などはそれなりの効果は上げていました。早いテンポで突き進む「アッピア街道の松」のバンダはバリトンやアルトホルンの類の響きです。これらの太い響きはなかなか印象的でした。 「フェルナンド・プレヴィターリ(1907~1985)」 こちらもしばしば来日した名高いオペラ指揮者。アドリア生まれ、トリノ王立歌劇場でチェロ奏者として活躍の後指揮者に転向、1936年ローマのイタリア放送響の音楽監督、 その後1973年まで聖チェチーリア音楽院管の首席指揮者。プレヴィターリはオペラ録音は数多くありますが、器楽の録音は比較的少なく、他にロッシーニの序曲集や東京交響楽団を振ったメンデルスゾーンの「スコットランド」があるくらいです。 来日時に東京響を振った「火の鳥」は今でも語り草となっている名演。 ・ 聖チェチーリア音楽院管 (1959年 スタジオ録音) レスピーギと縁の深い聖チェチーリア音楽院管弦楽団との録音、この時期プレヴィターリはローマ三部作の録音を残しました。 演奏は縦の線をきちっと合わせるトスカニーニタイプとは正反対のとにかく歌うことを重視した演奏。ただクアドリほどアンサンブルに無頓着ではなく、要所要所の抑えは完璧。聖チェチーリア音楽院管の暖かで南国的な響きは、ムード音楽のように流されがちですが、プレヴィターリの引き締まった指揮で通俗的になる一歩手前で踏み止まっています。ヴィヴラートとポルタメントを多用した「ジャニコロの松」はロマンティックで古いスタイル。小鳥の声は楽譜の指定より早くクラリネットソロの前から入りますが、この小鳥の鳴き声が実に美しく響いていました。バンダにサクソルン族を使用し、地の底から低音がゴウゴウと響く「アッピア街道の松」はスケールの大きな雄大な出来。
(2002.11.13)
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