back top next
「ローマの松」を聴く19・・・デ・ワールトとマリナー
「エド・デ・ワールト(1941~)」
オランダの名匠デ・ワールトは、最初オーボエ奏者として、アムステルダムコンセルトヘボウ管弦楽団に入団。その後ミトロプーロス指揮者コンクール第1位となり、バーンスタインに師事。
1973年~1979年  ロッテルダムフィルの音楽監督
1977年~1985年  小澤征爾の後任としてサンフランシスコ響の音楽監督
1986年~1995年  ミネソタ響の音楽監督
1989年~     オランダ放送フィル  首席指揮者
実力者の割にはポストに恵まれていませんが、オランダ放送フィルのマーラー交響曲全集はいずれも名演揃いでした。

・ サンフランシスコ交響楽団
(1981年 10月16日~19日 サンフランシスコ デイヴィスホール)
デ・ワールトのサンフランシスコ響音楽監督時代の録音。
音の遠近感をうまく表現し、水彩画のような淡白な色彩感覚を見せた演奏。
粘らずサラリと聴かせる演奏ですが迫力にも欠けず、サン・サーンスのオルガン交響曲のようにオルガンを豪快に鳴らした「アッピア街道の松」はなかなかのものです。
美しくも爽やかな「ジャニコロの松」も印象に残る好演でした。

「ネヴィル・マリナー(1924~)」
イングランド中部リンカーン生まれ、当初ヴァイオリン奏者として出発し、フィルハーモニア管やロンドン響のヴァイオリン奏者として、トスカニーニ、フルトヴェングラー、モントゥーを始めとした大指揮者の下で演奏経験を積んでいます。モントゥーに指揮を学び、
ロンドンでアカデミー・オブ・セントマーティン・イン・ザ・フィールズ(アカデミー室内管)を組織し、指揮者活動を開始。次第に活動の幅を広げ、膨大な量の録音を行っています。
1978年~1986年 ミネソタ管弦楽団 音楽監督
1986年~1989年 シュトゥットガルト放送交響楽団 音楽監督 

・アカデミー・オブ・セントマーティン・イン・ザ・フィールズ
 (1990年 9月6日~8日 ロンドン ワトフォード スタジオ録音)
室内管弦楽団として出発したアカデミー室内管は、規模の大きな曲を演奏する時には、
メンバーが増員されます。このコンビで、ブラームスの交響曲第4番を三島で聴いた事がありますが、トランペットのマイケル・レアードをはじめとした名手を揃え、なかなか高水準の演奏を聴かせました。
マリナーのレスピーギは、ローマ三部作の他には、「鳥」「風変わりな店」など、数多くの録音があり、いずれも明晰な名演です。「ローマの松」も透明で音の見通しの良い古典的なスタイルの情に流されないスタイリッシュな演奏となりました。聞き手に媚びるような大衆性とは無縁の純音楽的な名演だと思います。各パートを、これだけバランス良く響かせる技は非凡なものがあると思います。

・ シュトゥットガルト放送交響楽団
(1986年 12月22日 東京サントリーホール 演奏会録画)
マリナーがシュトゥットガルト放送交響楽団の音楽監督に就任後まもなくの来日公演の
ビデオ映像。基本的なアプローチはスタジオ録音との大きな違いはありません。
マリナーの棒は、上下にキチンと振った事務的なもので、出てくる音も整然とした明快そのもの。客席の3箇所に配置されたバンダの視覚的な効果も大きく、「アッピア街道の松」は大きな盛り上がりを見せ、終演後の客席も大きく湧いていました。
(2003.01.13)
back top next