|
|
今回は日本の指揮者を代表する三人のローマの松。 「山田一雄(1921~1991)」 ・新星日本交響楽団 (1989年 6月9日 サントリーホール ライヴ録音) ヤマカズさん晩年のライヴ。最晩年まで華のある演奏を聴かせた山田一雄。 この演奏も若々しく、ダイナミックな情熱的な演奏を聴かせます。 ただオケと指揮者の意思の疎通が充分でない部分が散見され、「カタコンブ松」の16分音符や「アッピア街道」で棒の感じ方に楽団員の中で食い違いがあり、ところどころアンサンブルが乱れて「ジャニコロの松」などはアブナイ所があります。しゃにむに突き進む「アッピア街道の松」も、冒頭のチェロとベースがズレていますが、曲が進むにつれて次第に熱を帯び、ドラマティックで鬼気迫る興奮を盛り上げます。終結部のフルオーケストラの強奏ドラの連打も凄まじく、オケも健闘、ヤマカズさんの真骨頂を示した熱演となりました。 「岩城宏之(1932~)」 岩城宏之は2種のライヴ録音を聴いてみました。 ・ 日本フィルハーモニー交響楽団 (1980年 4月5日 習志野文化センター ライヴ録音) 第一家電がオーディオマニア用に製作した45回転LP。ただ音そのものは、硬質な響きでさほど良いとは、思いませんでした。 演奏は、正直なところ指揮者の名誉となる演奏ではありません。冒頭のあまりにも重いリズムに、当初から失望してしまいました。オケの響きも色彩感に欠け、かなりモノクロームです。終曲では、しきりに大きな盛り上がりを見せますが、オケの表情も硬く、ちょっと練習不足ではないかと思いました。 ・ NHK交響楽団 (1979年 3月28日 NHKホール N響定期演奏会) レスピーキ生誕100年の記念の年、当時の演奏会エアチェック録音です。この時には、 ローマ三部作と組曲「鳥」が演奏されました。 こちらは響きもだいぶ練れていて、冒頭は遅いテンポながら愉悦感が良く出ていました。 「カタコンブの松」でバスクラがずれるなどのアクシデントはありますが、幻想的な雰囲気も上手く出ていて、安心して聴ける高水準の演奏だと思います。 終曲も火山の爆発のような火のような演奏を期待していたのですが、品良くまとめていました。 「小澤征爾(1935~)」 ・ ボストン交響楽団 (1977年 10月3日から17日 ボストンシンフォニーホール スタジオ録音) 小澤征爾がボストン交響楽団の常任となり、上昇気運にあった時の録音。 早めのテンポの生き生きとした快演。このような色彩感覚豊かな描写的な音楽になると、職人技とも言えるオケの鳴らし方のうまい小澤征爾の長所が、最大限に発揮されます。 オーケストラも素晴らしく、「アッピア街道の松」でのごく自然にテンポをあげ、次第に興奮を盛り上げる様は実にうまいものです。名ホール、ボストンシンフォニーホールの残響を生かした録音も良く、満足のできる演奏でした。
(2003.01.11)
|
|