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今回は、20世紀後半を代表する二人の巨匠の「ローマの松」 「セルジュ・チェリビダッケ(1912~1996)」 20世紀後半を代表するルーマニアの巨匠チェリビダッケは、若い頃から「ローマの松」をしばしば取り上げ、初の来日公演となった、読売響との演奏会でも取り上げています。 録音嫌いのチェリビダッケには、当然この曲のスタジオ録音は存在しませんが、シュトットガルト放送響の常任指揮者時代のライヴ録音が、遺児の許可を得て、正式にリリースされています。他に1968年のトリノ放送管弦楽団のライヴ録音もあるようです。 ・ シュトゥットガルト放送交響楽団 (1976年 6月20日 ライヴ録音) 目まぐるしく変化するテンポの中で、すさまじい音の奔流、この喧騒を残像として残しながら次の「カタコンブの松」に突入していきます。この静けさとの対比は実に鮮やか。 宗教的な荘厳さを漂わせる中、「ジャニコロの松」は、一つ一つの音のバランスが完璧で、宇宙的な広がりすらも感じさせました。 消え入るようなピアニシモから、ひたすらクレッシェンドで盛り上がる「アッピア街道の松」ともなると、演奏の立派さが曲そのものを越えてしまった印象です。全ての音が過不足なく鳴り渡っているものの、どことなく空虚さを感じさせてしました。これは贅沢な要求なのかもしれませんが。 なおこの日本版CDの解説は、昨年まで沼響がお世話になった齋藤純一郎先生が書いています。 また、このCDには付録として、1972年のリハーサル風景が付いています。 ・ シュトウットガルト放送交響楽団 (1972年 11月 リハーサル録音) リハーサルはカタコンブの松の始めからトランペットソロが入る前までで、チェロやヴィオラの響きのバランスを、精巧な機械細工を完成させて行くような進めていく実に緻密なリハーサルです。次の部分に進む時も、「だいぶ本質に近づいたが、まだまだだ。」というのが常套文句で、「一番難しい楽器はオーケストラだというのは、本当だな」とポツリと洩らした一言が印象的でした。チェリビダッケの頭の中には、さらに高度な理想とする音の世界が広がっていて、音として再現されたことはついになかったのではないか、と想像してしまいました。 「レナード・バーンスタイン(1918~1990)」 膨大な量の録音を残したバーンスタインのレスピーギは「松」と「祭」の録音があります。 ・ ニューヨークフィルハーモニック (1970年2月17日 ニューヨークフィルハーモニックホール スタジオ録音) この日には、モーツァルトの2台のピアノのための協奏曲の、レコ-ディングも行われています。この2曲は、おそらく一気に録音されたのではないでしょうか。熱い立派な演奏ですが、各楽器のソロが幾分ぎこちなさを感じさせ、アンサンブルも雑な印象です。 チェリビダッケの後に聞いたため、オケの響きに不純物がまじっているような雑さを感じてしまいました。 「カタコンブの松」、「アッピア街道の松」はソツのない出来ですが、幾分緊張感に欠けるように思います。「ジャニコロの松」に美しさの中に我を忘れて没入していくのが最も 印象に残りました。
(2003.01.05)
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