|
|
今回は、爆演として名高い爆裂指揮者バティスとスヴェトラーノフの「ローマの松」 「エンリケ・バティス(1942~)」 メキシコ生まれ、ジュリアード音楽院とワルシャワ音楽院で指揮を学び、1983年から メキシコシティフィルの首席指揮者。 ・ ロイヤルフィルハーモニック管弦楽団 (1991年 4月15,16日 ロンドン スタジオ録音) 速いテンポでオケを煽りに煽った猛演、ひたすら楽天的で品のなさがウリといった演奏ですが、デユトア盤のような気取りのないところが、かえって爽快感も感じさせます。 「カタコンブの松」の解放的でのびやかなトランペットソロ、これはこれで良いのかもしれません。クライマックスの練習番号12の5小節めホルンは、ケンペ盤と同じくタイなしの演奏。 「アッピア街道の松」では、ファゴットが不可解な音を出しているのと、大太鼓が落ちているような箇所もあり、テンポも前につんのめって転びそうな趣もありますが、細かなところは気にせずにひたすらテンポと音量を上げて行くところが、この指揮者の単純さをよく表わしていると思います。とにかくやりたいようにオケを鳴らした、ネアカな典型的爆演。 「エフゲニー・スヴェトラーノフ(1928~2002)」 モスクワ生まれのロシア指揮者界の巨人。最近では数少なくなったロシア音楽をもっとも ロシア的に聴かせることのできる巨匠でしたが、今年惜しくも死去。 N響にもたびたび来演し、日本でもお馴染みの指揮者でした。 1962年~1965年 ボリショイ劇場 首席指揮者 1965年~1999年 ソヴィエト国立交響楽団 音楽監督 1992年~2000年 ハーグ・レジデンティ管弦楽団 首席指揮者 ・ ソビエト国立交響楽団 (1980年 モスクワ音楽院大ホール、ライヴ録音) 多くの音楽マニア達が探し回り、ヤフーオークションで数万円の値がついてしまったという、天下の珍品。(私もオークションに出せばよかったな) あまりにも再発の要望が強く、日本のメーカーが原盤の所有先と交渉し、CD発売予定となったほどの演奏(本当に発売されるのであろうか?)。 異様に遅いテンポの奇演。バティスと比べるとそのテンポの異常さが際立ちます。 スヴェトラーノフ バティス T 2‘44“ 2’40” U 7‘03“ 5’28” V 7‘36“ 6’24” 7‘11“ 4’15” 特に「アッピア街道の松」では3分以上の開きがあります。 巨大な、とてつもなく巨大なスヴェトラーノフのライヴ、あまりにも音楽が巨大すぎて マイクに収録しきれていないような印象です。 冒頭から頭に突き刺さるようなトランペットの絶叫、ミュートをつけたホルンがヴィヴラートかけまくりの「カタコンブの松」の無気味さ、トランペットソロの前でフルートが大きく音をはずすのはご愛嬌。止まってしまうのかと思われるほど遅い「ジャニコロの松」で鳴りを潜めていたオケは、ついに「アッピア街道の松」で大爆発。 大熊の群れの大行進のような、極端に遅いテンポでズシンズシンと進む低音部。有り余ったエネルギーが行き場を求めて爆裂しまくりの金管群の凄まじい響きが荒れ狂います。 とどめは、ひたすら延ばし続ける最後の音。実に20秒ちかくフォルティシモで延ばし続けていました。ただただ呆然、史上最大最悪の「松」として有名なのも頷ける怪演。
(2002.12.28)
|
|