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「ローマの松」を聴く15・・・マゼール
「ロリン・マゼール(1930~)」
パリ生まれ、アバド、小澤と並び現代指揮者界を代表する巨匠。
父方は代々音楽家の家系で、幼い頃から英才教育を受け8才で指揮者、ヴァイオリニストデビュー。12才にしてニューヨクフィルを指揮、18才でアメリカのメジャーオケ、ピッツバーグ響のコンサートマスター兼副指揮者に就任。1960年には最年少の指揮者としてバイロイト音楽祭に登場といったとにかく大変な天才でした。
録音デビューは比較的遅く1957年。「ローマの松」は3種類の録音があります。

・ベルリンフィルハーモニー
(1958年 12月 スタジオ録音)
ベルリンを中心に活躍していたマゼール最初期の録音。この頃のマゼールは、ベルリンフィルとベルリン放送交響楽団を振った多くの録音を残しています。
フルトヴェングラー時代の猛者が多く残るベルリンフィルの録音には、さしものマゼールにも多少の遠慮が見えるため、この時期の録音は、マゼールの意気込みがストレートに伝わるベルリン放送響との録音に面白い演奏があります。
このベルリンフィルとの「ローマの松」は、比較的マゼールの個性よりもベルリンフィルの堅固な合奏力と、幾分暗めの重い響きを聴く1枚となっています。
演奏そのものは、黒光りするようなブラスの響きが心地よい劇的でドラマティックな演奏。「アッピア街道の松」で、地響きをたてるような当時のベルリンフィルに特有な低音部の響きはなかなか効果的でした。

・ クリーヴランド管弦楽団
(1973年 クリーヴランド メイソンホール スタジオ録音)
ジョージ・セルの後クリーヴランド管の音楽監督に就任した直後の録音。
セル時代の世界最高の緻密なアンサンブルと、気品のあるしなやかな響きは健在。
マゼールの指揮も、オーケストラを思うがままドライヴし、早く飛ばすだけではなく、余裕も見せた演奏です。響きがうまくブレンドされたデッカ特有の録音も音楽的でした。

・ ピッツバーグ交響楽団、 オルガン;アンソニー・ニューマン
 (1994年 4月26、27日 ピッツバーグ・ハインツホール、
  1996年 7月20日 ニューヨーク・聖イグナチオロヨラ教会(オルガンのみ))
マゼールと縁の深いピッツバーグ響の音楽監督時代の録音。オルガン部分のみは名手、
アンソニー・ニューマンを起用したニューヨークでの別採り録音です。
演奏はアクの強さの出た、一種独特の過激な演奏。「ボルゲーゼ荘の松」のトランペットの刺激的なアクセント、「カタコンブの松」トランペットソロ後のクライマックス部分では、トロンボーンの旋律のウラでホルンの5拍めの音を延ばし気味にして、遠近感のある独特な効果をあげていました。もともとライヴでは意表をつく超個性的な演奏を見せるマゼールですが、最近になって録音でもその傾向が現れてきたようです。
「アッピア街道の松」も金管楽器に独特のバランスを見せた演奏です。一般的にはクリーヴランド管との録音がバランスのとれた名演だと思いますが、私にはピッツバーグ響の録音が最も楽しめました。
(2002.12.24)
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