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「ローマの松」を聴く14 ・・・デ・ブルゴスとケルテス
「ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス(1933~)」
スペインを代表する指揮者。スペインのブルゴス生まれのため、生地のブルゴスの名前をつけてデ・ブルゴスとなりました。父はドイツ人、母はスペイン人。ビルバオ音楽院を卒業後、スペインの舞踏団の指揮者としてスタートしましたが、ミュンヘンの高等音楽院で指揮を本格的に学び、1958年にはビルバオ交響楽団の常任指揮者。
  スペイン国立管弦楽団 音楽監督(1962~1978)
  ライン・ドイツオペラ 音楽総監督(1965~1971)
  モントリオール交響楽団 音楽監督(1975~1976)
  スペイン国立管弦楽団 音楽監督(1988~)
  ウィーン交響楽団 音楽監督 (1991~)
  ベルリン・ドイツオペラ 音楽監督 (1992~)
日本では読売日響へのたびたびの来日でお馴染みですが、人気の点では今一つです。
私はスペイン国立管の演奏会を聴いたことがありますが、ベートーヴェンとストラヴィンスキーで実に充実した名演を聴かせました。アンコールに、ファリアやグラナドスなどのお国ものスペインの管弦楽曲を5曲ほど披露してくれましたが、これらが他の追随を許さぬほどの情熱的な演奏で、聴いていて圧倒された記憶があります。

・ニューフィルハーモニア管弦楽団
 (1970年代 前半  スタジオ録音)
新進気鋭の若手指揮者として売りだしたデ・ブルゴスが、メジャーレーベルに盛んに録音を行っていた時期の演奏。
音色の変化の多彩さを見せる「カタコンブの松」、清潔感を感じさせる「ジャニコロの松」など、演奏そのものは悪くないのですが、ステレオ2ステレオという、この時期流行だった、各パートにマイクを立て、後にミックスダウンするといったマルチマイクの録音方式が裏目に出ています。各楽器の響きがブレンドされずに個別に鳴り響くため、音響が人工的で薄い印象を与えます。特に「アッピア街道の松」のような曲になると、うるさいだけで大きなマイナスとなっていてました。逆に肝心なバンダパートはほとんど聞こえまないような状態でした。

「イシュトバン・ケルテス(1929~1973)」
ブタペスト生まれのケルテス。1955年からブタペスト歌劇場の副指揮者となりましたが、ハンガリー動乱で亡命。レスピーギと縁の深い聖チェチーリア音楽院で、プレヴィターリに指揮を学びました。以後はケルン市立歌劇場総監督(1964~1973)、ロンドン響首席指揮者(1965~1968)。ウィーンフィルとのドヴォルザーク、ブラームス、モーツァルトなどの名盤も多く、将来を嘱望されていましたが、1973年テルアヴィヴの海岸で遊泳中に高波に呑まれて死亡してしまいました。

・ ロンドン交響楽団
(1968年   スタジオ録音)
がっちりとした構成力、ロンドン響の機動力を十二分に発揮した名演。
各曲の絵画的的な描き分けの対比が見事で、自然体で早めのテンポでさっと仕上げた「ボルゲーゼ荘の松」から、「カタコンブの松」への画面の切り替わりなどは、実に鮮やかなものです。「カタコンブの松」トランペットソロが終わり盛り上がる部分のホルンパートは(練習番号12の2小節め)、ケンペ&ロイヤルフィル盤と同じ改変がありました。
イギリスのオケで、この部分の共通した伝統があるのかもしれません。
「アッピア街道の松」では、ロンドン響の輝かしいブラスの響きが全開。
練習番号22のfpを極端に強調させ、その部分からしばらくは、管楽器を極端に抑え、弦楽器のみを強調する解釈は、この演奏独特のものです。
(2002.12.18)
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