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今回はアメリカ生まれのマイナーな指揮者二人の「ローマの松」 「ルイス・レーン(1923~)」 テキサス生まれで大指揮者ジョージ・セルの愛弟子、セル時代のクリーヴランド管弦楽団の准指揮者として、世界最高のオーケストラを陰で支えたルイス・レーン。今存命ならば80近い年齢で、一時はグラミー賞候補にもなりましたが、結局縁の下の力持ちで終わってしまったようです。 当時のセルの弟子には、他にマイケル・チャーリ、ジェームズ・レヴァインといった人たちがいて、結局この中ではレヴァインが抜きん出て有名となりましたが、セル自らはレーンを最も可愛がったそうです。 セルの死後、水準が落ちていたダラス響の音楽監督(1974~1976)となりましたが、いまひとつぱっとせず、その後はアトランタ交響楽団の音楽監督に就任した合唱指揮者として著名だったローバート・ショウに呼ばれ、アトランタに行きました。オーケストラ指揮者としての実力はショウよりも上でしたが、結局ここでも准指揮者でした。結局レーンはアメリカ指揮者界での優秀なニ流指揮者と評価され、メジャーオケからは無難な客演指揮者として重宝されてしまったようです。 ・ アトランタ交響楽団 (1983年5月17日、1984年 9月22日 アトランタオーケストラホール スタジオ録音) CD初期に録音の優秀さで鳴らしたテラークの録音。発売当時は、演奏内容よりも録音の優秀さで評判となり、良くオーディオ雑誌の試聴に使われていました。今聞いても、オルガンの重低音とオーケストラの艶の有る響きが見事にブレンドされた素晴らしい録音です。 演奏もオケの鳴らし方が、実に練れているよくまとまった演奏で、「カタコンブの松」におけるハープの響きの繊細な生かし方、たっぷりと歌わせた弦楽器、雰囲気満点の「ジャニコロの松」など、老練な出来です。「アッピア街道の松」も遠近感のある、見事な盛り上がりを見せていました。これはルイス・レーンの残した唯一の傑作かもしれません。今どうしているのだろう。 *その後調べたところ、オハイオ州のアクロン市交響楽団の音楽監督を経て、現在ミシシッピーのテペイロ市交響楽団の音楽監督でした。 テペイロ市は、エルヴィス・プレスリーの生地として有名なところだそうです。 「キース・クラーク(1947~)」 キース・クラークについてはよくわかりません。ウィーンとタングルウッドのセミナーで指揮を学び、主にアメリカ西海岸を中心として活動しているようです。 1978年にカリフォルニアに創設されたパシフィック交響楽団を指揮して、いくつかの アメリカ現代作曲家の録音を残しています。 ・ パシフィック交響楽団 (1986年10月2、3日 カリフォルニア コスタ・メサ オレンジカントリーホール ライヴ録音) パシフィック響の本拠地オレンジ・カントリーホールでの演奏会ライヴ、どうやら柿落としの演奏会のようです。 生きの良さが身上の元気が良い爽やかな演奏。オーケストラもバリンバリンと鳴って、スポーツ的な快感がありますが、旋律の受け渡しに余韻のないのがが不満。 全体的に早いテンポの演奏ですが、「アッピア街道の松」はきわめて遅いテンポをとり、イングリッシュホルンの不調なソロのために、ここでがくんと停滞感を感じさせるものになってしまいました。終結部は強引に盛り上げた力演。外面的で力瘤の入った演奏です。
(2002.12.15)
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