|
|
「ルドルフ・ケンペ(1910~1976)」 ドレスデン国立歌劇場の首席オーボエ奏者から指揮者に転向し、ドイツの地方歌劇場から地道なキャリアを築いていった典型的なカペルマイスターのルドルフ・ケンペ。 ドレスデン・シュターツカペレ(1949~1953)首席指揮者、 ロイヤルフィル(1961~1975)首席指揮者、 チューリヒ・トーンハレ管(1965~1972)首席指揮者、 ミュンヘンフィル(1967~1976) 音楽監督 BBC交響楽団(1975~1976) 常任指揮者 R.シュトラウス、ブルックナーなどのドイツ、オーストリア系のレパートリーでは、正統的な名演を聞かせました。 「ローマの松」は自らが首席指揮者であった、ロイヤルフィルとチューリッヒ・トーンハレ管との録音があります。 ・ ロイヤルフィルハーモニー (1964年 スタジオ録音) 60年代の前半に、リーダースダイジェスト社が名録音技師ケネス・ウイルキンソンとともに晩年のミュンシュやライナーらの名指揮者たちを起用し、製作した一連の録音中の1枚。国内盤ではRCAの廉価盤LPが初出でした。 実に風格のある雄大な名演。ロイヤルフィルのエレガントな木管群と輝かしい金管群をうまく生かした演奏です。のびやかな楽しさの中に品格の漂う「ボルゲーゼ荘の松」、人の声を思わせるほど弦楽器の表情が豊かな「カタコンブの松」でのトランペットとヴァイオリンの一体感は秀逸。ここで練習番号12の5小節めのホルンのユニゾンはタイを省略し区切って吹かせていました。クラリネットソロが抜群にうまい「ジャニコロの松」骨太な「アッピア街道の松」の盛り上がりなど、奥の深い純音楽的な名演となりました。 ・ チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団 (1973年 12月11日 チューリヒ・トーンハレ ライヴ録音) トーンハレ管弦楽団創立100周年記念CDに収録されたライヴ録音。ライヴとはいえ、73年の録音としては随分と鮮明度を欠く録音です。オケの技量もいまひとつ、第1曲などケンペの棒にやっと付いていくといった趣です。 「カタコンブの松」練習番号12、5小節後のホルンは楽譜のとおり、「アッピア街道の松」 5連符も楽譜に忠実ですが、オケの音色に魅力に乏しく、この演奏がなぜ100周年記念CDに採用されたのかが不思議なほどケンペとしては平凡な出来でした。 バンダのテノールブッチーナのパートはほとんど聞こえません。 「ホルスト・シュタイン(1928~)」 N響の名誉指揮者としてお馴染みのホルスト・シュタインも、故郷ブッパタール市立歌劇場からキャリアを開始したドイツの指揮者。ワーグナーの聖地バイロイトでクナッパーツブッシュ、カイルベルト、カラヤンの元でアシスタント指揮者として経験を積み、バイロイトに何度も登場し、スケールの大きなワーグナーを聞かせました。 私は、シュタインが首席指揮者をつとめているバンベルク交響楽団の演奏会で、ブラームスやベートーヴェンを聞いた事がありますが、いずれも渋く重厚な、典型的な本物のドイ音楽を聞かせてくれました。最近は、健康の不調が伝えられ、ほとんど活動のニュースが 入って来なくなってしまいました。 今回はN響に客演した時の演奏を聞いて見ました。 ・ NHK交響楽団 (1985年 11月25日 NHKホール 演奏会録画) シュタイン来日時の定期公演のライヴ映像。今も続いている「N響アワー」のレスピーギ特集での放送。この時の番組の解説メンバーは芥川也寸志、木村尚三郎、なかにし礼といった懐かしい顔ぶれでした。 演奏は、きわめて職人的に手際良くまとめたものです。随所で爆発するシュタイン独特の芯の有るフォルティシモはなかなか魅力的。特に「カタコンブの松」は雄大な出来です。 「アッピア街道の松」も早いテンポで盛り上げていましたが、他の二曲はもう少しオケの音色に艶が欲しいと思います。「ジャニコロの松」の小鳥は録音ではなく笛を使用。ここでシュタインが笛の奏者?に細かく棒を振っていたのが面白い。 バンダは、トランペット2本、ワーグナーチューバ2本、トロンボーン2本、舞台の最後列に一列に並んでいました。ワーグナーチューバの使用はカラヤンと同じでした。
(2002.12.15)
|
|