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「ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908~1980)」 カラヤンは3種類の録音を残していますが、そのうち1種類は大阪でのライヴ収録で、 LDでの発売が予告され商品番号まで決定していましたが、未だ発売されていないようです。 ・ ベルリンフィルハーモニー (1977年12月5、6日 ベルリンフイルハーモニーザール スタジオ録音) ベルリンフィルの威力を充分に発揮した演奏ですが、重心の低いオケの響きは「ボルゲーゼ荘の松」では幾分重い印象です。「カタコンブの松」では、クライマックスの練習番号12でホルンが朗々と歌う部分で、ウラを付けているトランペットが見事に一拍ずつずれていました。レガートを多用し、ポルタメントを付ける「ジャニコロの松」には好き嫌いが別れるところだと思います。「アッピア街道の松」で、微かに遠くから聞こえてくる緊張感に満ちたピアニシモはカラヤン独特のもので、楽器の数が次第に増し、ひたすら上へ上へと盛り上がり、頂点の到達点ではベルリンフィルの威力全開、実に壮麗なクライマックスを築きます。中でもテノールブッチーナのブルックナーを思わせるような極めて荘厳な響きは印象的で、これは来日公演と同様、ワーグナーチューバを使用しているのではないかと思われます。 ・ ベルリンフィルハーモニー (1984年 10月18日 大阪シンフォニーホール ライヴ映像) カラヤン来日公演時のライヴ。朝日放送が収録し、テレビ放送された時のエアチェックビデオです。この1週間後の東京公演を私は聴くことができました。この時点のカラヤンとベルリンフィルとの関係は、クラリネット奏者のザビーネ・マイヤー事件などもあり、急速に悪化しつつありました。実際に見るカラヤンも足が不自由なようで、体調も万全でないように見えました。 が、この映像で見る演奏は、そのような懸念を微塵も感じさせない素晴らしい出来です。 確かに指揮台上のカラヤンは、往年のように目を瞑り、流麗な指揮ぶりは失せ、大きく目を見開きながらビートを精確に刻むものに変っていますが、出てくる音楽は巨大そのもの。ベルリンフィルはやはりスーパーオケでした。スタジオ録音のような傷もなく完璧な出来です。特に「アッピア街道」のクライマックスは凄まじいものがあり、トランペット5本、ワーグナーチューバ5本という巨大なバンダを従えてひたすら盛り上がる様は映像を通じても実に感動的でした。 ・フィルハーモニア管弦楽団 (1958年1月9日 ロンドンキングズウェイホール スタジオ録音) 若々しくも極めて自然に流れる演奏。気になるポルタメントもなく、現代的でスタイリッシュな好演でした。特に「ボルゲーゼ荘の松」の愉悦感は格別、抜群の演奏を聞かせるホルンセクション。遅いテンポの「アッピア街道の松」と「カタコンブの松」のクライマックスも手慣れたもの、これで録音がもう少し良ければ後のベルリンフィルとの再録音をも凌いだと思います。
(2002.12.09)
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