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オーケストラ版編曲の第2回は、ラヴェル版とほぼ同時に着手され、 初の完全全曲オケ編曲版となった、レオ・フンテクの編曲を紹介します。 <レオ・フンテク編曲 1922年> スウェーデンのヴァイオリン奏者で指揮者でもあったフンテクの編曲は、ラヴェルが省略 した5番目のプロムナードも含む完全な全曲編曲版です。 編成も大きく、3管編成を基本としてピッコロ2本にホルンは6本、トランペット4本 にピアノ、チェレスタも加わります。 不思議なことに後から編曲されたラヴェル編と共通な部分も多く、「殻をつけた雛の踊り」の終結部で雛がコケーッコと鳴く部分、原曲と多くの編曲は2回鳴きますが、ラヴェル編とフンテク編は1回のみです。カタコンブ、リモージュも非常によく似ています。 最初の「プロムナード」は、荘重な弦楽器のみで始まり、「古城」のソロはイングリッシュホルン、ピアノから始まる「ヴィドロ」のソロは、クラリネットで始まり、フォルティシモ部分では6本のホルンとドラの連打で大きな盛り上がりを作ります。 「サミュエルゴールデンベルクとシュミイレ」は低音弦楽器とフルート、シロフォンソロの対話。 「ババ・ヤーガの小屋」は、打楽器を駆使し悪魔的な不気味さを演出していました。金管楽器の活躍する「キエフの大きな門」のコラール部分は、弦楽器のみで演奏されます。 全体の印象としては、弦楽器主体の編曲ですが打楽器の使い方が効果的で、荒削りなロシア的な色付けに独特の魅力があり、私個人としてはラヴェル版より好きな編曲です。 チャイコフスキーの「くるみ割人形」にも似たメルヘン的な部分もあり、 「ババヤーガの小屋」から「キエフの大門」にかけて金管楽器と打楽器を効果的に 駆使した壮大な盛り上がりは感動的ですらあります。 録音は、アシュケナージがフィンランド放送響を振った解説付きのLDが出ていました。 アシュケナージは、自らの編曲の完成後も、実演ではしばしばフンテク版をとりあげて いるようです。またレイフ・セーゲルスタム指揮フィンランド放送響のCDも出ていて、 このフンテク版とゴルチャコフ版を組み合わせたサラステ指揮によるCDも出ています。 今回はアシュケナージとセーゲルスタムの演奏を聞いて見ました。 演奏の出来は、同じオケでありながらセーゲルスタムが圧倒的に良く、 この編曲のスラヴ的な色彩を実にうまく表現していました。 アシュケナージ盤は映像に随分と助けられていますが、ラヴェル版との違いを強調するカメラアングルと巨大な楽器編成が非常に興味深い内容です。 今回セーゲルスタムの演奏と聴き比べて気がついたのですが、アシュケナージは、リムスキー・コルサコフ版のピアノ譜をベースに編曲されたフンテク版の中で、ピアノ原典版と異なる部分をピアノ原典版に合わせて音譜のいくつかを書き替えています。 例えば「サムエルゴールデンベルクとシュミイレ」の終結部、 フンテク版のオリジナルでは、コルサコフ版ピアノ譜に忠実にドレドシとなっていますが、アシュケナージは原典版のドレシシに変えていています。 「卵の殻をつけた雛の踊り」のコケーコと鳴く終末部分も、フンテク版はラヴェル版と同じく 1回鳴きますが、これも2回鳴くように変えています。
(2002.02.04)
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