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「展覧会の絵」を聴く7・・・トウシュマロフ編曲版
今回からさまざまなオーケストラ版の演奏を紹介していきます。
まず有名なラヴェル版以外の編曲をほぼ編曲年代順に紹介します。

<ミハイル・トシュマロフ編曲  1891年>
「展覧会の絵」初のオーケストラ編曲は、リムスキー・コルサコフの弟子のミハイル・トシュマロフによってなされました。この人について、私は「展覧会の絵」の編曲者としての名以外は聴いた事がないので、どのような作風かはよくわかりません。
結局ムソルグスキーの個性あふれる原曲の編曲者としては役不足だったようで、編曲の際、師匠のリムスキー・コルサコフが手を加え、グラズノフも手を貸しているようです。

トシュマロフ版のプロムナードは1曲のみ、原曲から以下7曲の抜粋で、
プロムナード−古城−卵の殻をつけた雛の踊り−サミュエル・ゴールデンベルクとシュミイレ−リモージュ−カタコンブ−ババ・ヤーガの小屋−キエフの大きな門
の順で演奏されます。
編成は、ほぼ完全な3管編成ですが、ファゴットは2本、トランペット2に、トロンボーン3とチューバに各種打楽器にピアノも加わります。

この編曲の録音は、マルク・アンドレーエ指揮のミュンヘンフィルによる演奏がBASFレーベルからLPで出ていました。しかしBASFの他の録音と同様、未CD化のため極めて入手難の状態です。
幸いにして1993年にアンドレーエが来日し、N響を振ってトシュマロフ版の演奏を残していますので、今回はこの時の公演のエアチェックビデオを聴きました。

以下は各曲の特徴です。

・ 「プロムナード」・・通常の第1曲目のプロムナードではなく、ラヴェル編でカットされて
  いた第5曲目のプロムナードが演奏される。冒頭は弦楽器5部による弦楽器主体の演奏、
  後半に金管楽器群が加わり大きな盛り上がりを見せ、シンバルの連打のうちに終わり
  最後の音を伸ばしたまま「古城」に突入。
・ 「古城」…・・ソロはイングリッシュホルン、オーボエ、フルートの順。
・ 「卵の殻をつけた雛の踊り」…この曲はラヴェル版と同様木管中心で、ラヴェル版では
  1回しか鳴かない終結部のコケーッコと鳴く部分はピアノ譜のとおり2回鳴く。
・ 「サムエルゴールデンベルクとシュミイレ」…・ラヴェル版では低音弦楽器と
  ミュートをつけたトランペットが、ここでは低音弦楽器とクラリネットとフルートの
  対話。
・ 「リモージュ」…・ラヴェル版とあまり変らず。全合奏による。
・ 「カタコンベ」…・ここでも金管楽器中心であるのが他の編曲と共通しているが、
  ドラとバスドラムが随分派手に響く。響きの質としてはリムスキー・コルサコフの
  「シェエラザード」を彷彿させる。
・ 「ババヤーガの小屋」…・ホルンのゲシュトップが特徴的、ここではグラズノフ風の響き。
・ 「キエフの大きな門」…・シンバル叩きっぱなしの祝典的な雰囲気に満ちた編曲。
  コラールの前半は木管、後半コラールのブラスクアイヤーによる柔らかな響きは
  印象的。後半はピアノと打楽器を多用、随分と楽天的なのは演奏の質によるものかも。

この編曲を聴いた印象では、リムスキー・コルサコフ編曲の「禿山の一夜」ほどの完成度はなく、
楽器の使用も教科書とおりの常識的なもので、ラヴェル版のような意外性に欠けています。
結局音楽大学の学生の作品を、先生が添削した範疇からは超えていないと思います。
ただ音色はまぎれもなくリムスキー・コルサコフの音色で、ムソルグスキーの土俗的とも
言えるスラヴ風の色合いよりも、幾分都会的な洗練された響きはラヴェル版とも幾分通じる
部分があると思いました。
(2002.02.03)
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