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「カルロ・マリア・ジュリーニ(1914〜)」 北イタリアのバレッタ生まれの巨匠、ミラノ・スカラ座の音楽監督、ウィーン響の首席指揮者とロスアンジェルスフィルの音楽監督を短期間務めましたが、その音楽活動の大部分をフリーで通した孤高の大指揮者。98年に指揮活動を引退。 ジュリーニは、ベルリンフィルやシカゴ響、ウィーンフィル、コンセルトヘボウ管などの世界の一流オーケストラと録音を残していますが、自分が納得した作品だけしか取り上げなかったために、その録音は実力の割には多くはありません。 「展覧会の絵」の録音はシカゴ響、ベルリンフィルとのスタジオ録音とフィルハーモニア管とのライヴ録音があります。 ・フィルハーモニア管弦楽団 (1961年9月7日 エジンバラでのライヴ) BBC放送に残された貴重なライヴ録音を積極的に発売しているBBCレジェンドシリーズの中の1枚。 早めのテンポ、壮年期のジュリーニの情熱的なライヴ。よく歌う「テユイリ」の絶妙の間、「ヴィドロ」はさらっと片付け、「卵の殻を被った雛鳥の踊り」の生き生きとして軽妙な扱いなど、実に手慣れたものです。猛烈な早さで駆抜ける「リモージュ」を聴いていると当時のフィルハーモニア管がいかに高性能なオケであったかがわかります。 「カタコンブ」から「キエフの大門」にかけては、しだいにテンポを早めて熱狂的な終結部を迎えます。 ・シカゴ交響楽団 (1976年 4月6日 スタジオ録音) ジュリーニがシカゴ響の首席客演指揮者となって録音した、初めての録音。 ひたすら内面を見つめた気の引き締まるような辛口の演奏です。遅いテンポでじわりじわりと攻めてくる「ヴィドロ」。「古城」では、カラフルさというよりも明るさの濃淡を際立たせた、まるで水墨画の名画を見る趣があります。シカゴ響のスーパートランペッターのハーセスの妙技はここでも健在で、「サムエル・ゴールデンベルクとシュミイレ」の機関銃のようなタンギングにはひたすら唖然とするのみです。「ババヤーガの小屋」から「キエフの大門」も渋い盛り上がりを見せていました。 ・ベルリンフィル (1990年 2月17、19日) 厳しくも彫りの深い緊張感に満ちた演奏。華やかさや色彩的な部分はなく、モノクロームな「展覧会の絵」。テンポはひたすら遅く「カタコンブ」の1音1音は気が遠くなるような長さです。これが並のオケならば文字通り息切れがしてしまうのですが、ベルリンフィルはさすがに破綻を見せません。 外面的な効果を狙う部分は皆無で、ただひたすら音楽に真摯に立ち向かう姿勢が聞き手にせまる演奏。恰幅の良い振幅が大きな、いわゆる大演奏の類なのでしょうが、私には立派な演奏すぎて、どうも堅苦しく感じてしまいました。
(2002.05.15)
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