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「展覧会の絵」を聴く28・・・オーマンディー
「ユージン・オーマンディー(1899〜1985)」
1938年から42年の間、フィラデルフィア管弦楽団の音楽監督の地位にあったオーマンディは、バロック音楽からビートルズナンバーまで膨大な量の録音を残しています。
特に色彩豊かでゴージャスなオケの響きを生かした後期ロマン派から近代音楽にかけての録音には独特の魅力があり、「展覧会の絵」のような曲になると、その魅力が最大限に引き出されています。

「展覧会の絵」には、以下の6つの録音があります。
 オケは全てフィラデルフィア管弦楽団。
・1937年10月17日   カイエ版による唯一の録音
・1953年 2月15日   ラヴェル版によるオーマンディ初録音
・1958年         モスクワでのライヴ録音
・1966年4月21日、6月18日   ステレオ録音
・1973年4月25、26日   RCAに移籍後の初録音。
・1977年7月1日   ライヴ映像

カイエ版については、既に紹介済みなので、今回はモスクワライヴを除いた4種類の演奏を聴いてみました。
オーマンディの演奏は、若い頃から芸風の変化がほとんどない指揮者でした。したがって1953年録音から1977年の演奏までの20年間には、さほど大きな差はありません。
特に得意とした「展覧会の絵」ともなると、いずれもフィラデルフィア管の豊麗な響きを前面に押し出した、聞き手にオーケストラを聴く醍醐味を最大限に味合わせてくれるゴージャスな演奏になっています。ただ録音が後になるほど、オーケストラの響きに柔らかさとふくらみが増し、テンポ運びにも余裕が見られるようになっています。

モノラルの53年版は、録音に鮮明さが欠けるために、特に前半はいまひとつのノリが足りない
演奏ですが、フルートのキンケイドをはじめとしたストコフスキー時代の名手が健在の時期だけに、管楽器のソロに輝かしさに独特のエレガントさが加わっています。
66年盤は、輝かしさでは全ての録音中最高の出来で、この演奏を初めて聴いた時、冒頭「プロムナード」でのトランペットが、あたかも金粉が空間を散乱しているかのような輝かしい響きに圧倒的された記憶があります。各楽器のソロも見事。後半のクライマックスも絢爛豪華で、この録音が一番、このコンビらしさの出た演奏だと思います。
70年代の二つの録音は、以前の演奏に比べて豊麗さの中にゆとりを感じさせる演奏となっていましたが、その分輝かしさや華麗さは後退していました。

今回オーマンディーの演奏を聴き比べて初めて気が付いたのですが、ダイナミックスの差、すなわちピアノとフォルテの落差が意外と少ないように思います。「ヴィドロ」など、ほとんどメゾフォルテから始まりメゾフォルテに終わる演奏でした。

オーマンディーは演奏効果を上げるために、楽器の追加やオーケストレーションの改変を行うことがあります。77年の映像を良く見ると、管楽器はかなり増員していて、「キエフの大門」の練習番号150の直前にティンパニのグリッサンドを加えていました。
また66年盤には「キエフの大門」終結部のティンパニのトレモロを2小節早く始めさせ、「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミイレ」の低音部分にもいくつか仕掛けがあるようで、重心の低い豊かな響きを見せていました。
(2002.05.12)
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