back top next
「展覧会の絵」を聴く23・・・ゲルギエフ
「ヴァレリー・ゲルギエフ(1953〜)」

コーカサス生まれ、名教師ムーシンに師事、77年カラヤン指揮者コンクール1位なしの2位。アルメニア国立響の首席指揮者を経て、88年キーロフ歌劇場の芸術監督に就任し、短期間で劇場改革を実現し、大幅に水準を持ち上げました。
「展覧会の絵」は来日公演でも名演を聴かせ、2000年のウィーンフィルとのライヴ録音が最近発売されました。

・ ウィーンフィル
(2000年4月30日ライヴ録音)
この曲の数多い録音中で群を抜く名演。同じ指揮者の「春の祭典」では、強引なほど個性的な表現が聴かれましたが、「展覧会の絵」では正統派のアプローチの中に新鮮な表現が随所に見られる素晴らしい演奏となりました。飴色のこくのあるウィーンフィルの奥深い響きも魅力的。特に印象に残ったのは、ピアニシモ部分の実に雄弁なことで、「カタコンブ」がこれほど宗教的な静謐さを持って表現されたのは、かつてなかったことです。
「殻を被った雛鳥の踊り」の独特のタメは、クーゼヴィッキー1943年盤以来の鮮やかさ。「キエフの大門」の第2コラールの後における鐘の音の深い音色、それに絶妙のバランスで被ってくるオケの響きには思わず感動してしまいました。そして終結部の鐘はよりクリアな音色の鐘を使うといった凝りようです。
ある種通俗的なこの「展覧会の絵」のスコアから、これだけ深い表現を導き出すことができた指揮者は、数ある名指揮者の中でもトスカニーニやチェリビダッケなどごく少数で、ゲルギエフの才能が現代の指揮者の中で極めて傑出したものであることの証明だと思います。私が聴いた「展覧会の絵」の中では、チェリビダッケ&ロンドン響の来日公演に次ぐ名演奏。

これはライヴ録音で、正規録音が出ていますが、私は一般発売が待ちきれずに同じ演奏日の海賊盤を買ってしまいました。実はカップリングされていた「火の鳥」も聴きたかったのです。(正規盤のカップリングはムソルグスキーの管弦楽曲集)
ライヴならではのいくつかのミスはありますが、おそらく正規盤では編集で修正されていると思います。
(2002.04.19)
back top next