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今回からロシアの指揮者たちの演奏を紹介していきます。 彼らの「展覧会の絵」には、ゴロワーノフ、スヴェトラーノフ、ロジェストヴェンスキー、フェドセーエフ、、テミルカーノフ、プレトニヨフ、ゲルギエフ、マリス・ヤンソンス、といった錚々たる顔ぶれの録音がありますが、大部分の録音は、ロジェストヴェンスキーのようにストコフスキー版を使ったり、ラヴェル版を使用していても自らが手を加えたりしていて、ロシア色濃厚な雰囲気を前面に押し出した演奏が多いのが特徴です。 「ニコライ・ゴロヴァーノフ(1891〜1953)」 20世紀前半を代表するロシア指揮界の巨人。モスクワ生まれ、イッポリトフ=イワーノフに作曲を師事、ボリショイ劇場、モスクワ放送響の首席指揮者。スターリン賞4回受賞といった旧ソ連を代表する指揮者で、ベートーヴェンからワーグナー、グリーグなど幅広いレパートリーの膨大な数の録音を残しています。 名ヴァイオリニスト、オイストラフをソリストとした「シェエラザード」をはじめとしたロシア音楽に個性的な名演があり、「展覧会の絵」には、モスクワ放送響を振った1939年、1953年の録音があります。 ・ モスクワ放送交響楽団 (1953年スタジオ録音) ゴロヴァーノフの「展覧会の絵」は、ラヴェル版を基本としながらも独自に手を加えたゴロヴァーノフ版ともいえる演奏です。プロムナードは冒頭の1曲のみ、これはヘンリー・ウッド版と共通した特徴で、「キエフの大門」のシンバル連打は、トシュマロフ版のアイディアです。 プロムナード終結部ではテンポを緩めながら最後の音は長くのばし、テインパニの猛烈なクレシェンド付加。ボルガの舟歌にも似た「古城」では、中間部に突然のアチェレランドその直後の大ブレーキといった具合。「テユイリー」はトライアングル叩きっぱなし。 「ヴィドロ」での哀愁を帯びたヴィヴラートをかけたチューバは、まるでイタリア田舎町の葬送行列のようです。 「ババヤーガの小屋」は猛烈に速いテンポで始まるものの、中間部アンダンテモッソの12小節前で突然倍のテンポに落ち聞き手を驚かせます。「サミュエルゴールデンベルクとシュミイレ」や「カタコンブ」でのドラや大太鼓トレモロ、コントラファゴット加筆は後の多くのロシア指揮者も採用していて、ロシア指揮界の中で、ゴロヴァーノフの影響が少なからぬものがあったと想像されます。 ゴロヴァーノフの「展覧会の絵」は、咆哮する金管、ヴィヴラートたっぷりの弦楽器、変化自在のテンポの怪演奏でした。 今回はイタリアのアルレッキーノから発売されたCDとソ連メロディアのオリジナルLPを聞いて見ましたが、どちらも録音状態は良いとはいえず、強奏部分で音が割れるのには閉口しました。
(2002.04.13)
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