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「展覧会の絵」を聴く20・・・デユトアとクリヴィヌ
「シャルル・デユトア(1936〜)」
スイス、ローザンヌ生まれ、ローザンヌ響、エーテボリ響の指揮者を経て1977年モントリオール響の音楽監督となり大ブレイク、楽団を短期間の内に世界的な水準に磨き上げ、フランスのオケよりもフランス的ともいえる個性的なオケに育てあげました。
録音もかつてのアンセルメの再来とも言えるほど、フランス音楽を中心に数多くの大ヒットを飛ばしました。1991年からフランス国立管の音楽監督を兼任、1996年からはN響の常任指揮者となりわが国でも御馴染みの存在。
「展覧会の絵」はモントリオール響とのスタジオ録音がありますが、今回はフランス国立管との来日公演のビデオを聴いてみました。

・ フランス国立管弦楽団
かつてのフランス国立放送管弦楽団との来日公演ライヴ。デユトアらしい洗練された見通しの 良い演奏です。聞いていて誰にも解りやすい「展覧会の絵」、オケの響きも華麗で水準以上ですが、いまひとつ指揮者との関係がうまくいっていないようで、アインザンツにかなりの乱れがあり、トランペットやホルンはかなり派手に落ちています。
6本ピストンのフレンチチューバが「ヴィドロ」で使用されていました。ファゴットもフレンチタイプのバソンを使用。大きな広がりの「カタコンブ」や「キエフの大門」では巨大な鐘を使い大きな盛り上がりを作っていましたが、最後までオケと指揮者の間の溝は埋められずに終わっていたように思います。

「エマニュエル・クリヴィヌ(1947〜)」
グルノーブル生まれ、父はロシア人、母はポーランド人ですが音楽教育はフランスで受けています。当初はヴァイオリニストとして出発し、録音も残しています。カール・ベームの影響で指揮者に転向、フランス放送新管の首席指揮者の後、国立リヨン管の音楽監督。

・国立リヨン管
 (1993年スタジオ録音)
羽毛のように繊細な「展覧会の絵」。やわらかで細身のオケの響きも完全にラヴェルの世界
です。各曲の性格付けが実に巧みで「ティユリー」や「殻を被った雛鳥の踊り」のような軽い曲ではラヴェルの「マ・メールロア」にも似たコケティッシュで童話の世界にも似た音楽を繰り広げていきます。
「ヴィドロ」や「カタコンブ」のような曲になると幾分アクの強さが不足していますが、
「ババヤーガ」から「キエフの大門」までの大きな盛り上がりはなかなか見事です。
フランスタイプの「展覧会の絵」の中では、私はデュトアよりもこのクリヴィヌを上に置きます。
(2002.04.09)
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