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「ルイ・フレモー(1921〜)」 北フランス生まれのフレモーは、第2時大戦中はレジスタンス運動に参加、音楽を本格的 に学び始めたのは戦後、二〇代も半ばを過ぎてからでした。指揮デビューは32歳、モンテカルロ歌劇場管、ローヌアルプスフィル、バーミンガム市立管の音楽監督を歴任、日本にもたびたび訪れ、東京都響を振った録音もあります。レパートリーが非常に広く、モンテカルロとバーミンガム時代に、バロックから近代作品までの合唱作品やオーケストラ作品の膨大な量の優れた演奏の録音を残しました。「展覧会の絵」は、モンテカルロ歌劇場管と東京都響を振った録音があります。 ・ モンテカルロ歌劇場管弦楽団 (1960年代はじめ) モンテカルロのオケは低音が軽く、明るいフランスのオケの響きですが、パリ音楽院管やフランス国立管のような都会的な洗練さからは遠く、いわばフランスの地方オケの典型。 エラートの上品な録音の影響もあり、水彩画のような淡い響きが特徴の演奏でした。 派手さはありませんがゆっくりとしたテンポ、がっちりとした構成力のある男性的な演奏。ぼそぼそ始まる「ヴィドロ」などなんとも鄙びた演奏で、チューバのテクニックも今一つですが、「テユイリー」や「卵の殻を被った雛の踊り」などは、軽妙な味わいが良く出てい ました。後半「カタコンブ」からの終結部は、フレモーらしいがっしりとした豪快さが出た名演奏。 「ジャン・クロード・カサドシュ(1935〜)」 フランスの音楽界では名の知られた名門、カサドシュ一家の一人。パリに生まれ、 パリ音楽院では打楽器を専攻。指揮はデルヴォーとブーレーズに学んでいます。 ロワールフィルの指揮者を経て、国立リールフィルの首席指揮者。 「展覧会の絵」は、ひところ安売りワゴンセールでよく見かけたロイヤルフィルハーモニックコレクションの録音があります。今回はこの録音と、1982年リールフィルとの来日公演の演奏を聞いてみました。 ・ ロイヤルフィルハーモニー (1990年ころ スタジオ録音) 演奏そのものは普通のごく出来、滑らかでメルヘンチックなフランス風の「展覧会の絵」でクリュイタンスの演奏をそのまま小型にしたような演奏です。録音が非常に鮮明で、これはこれでなかなか楽しめました。遅い「ビドロ」では1拍めに余韻を持ったアクセンントを付け、ブーンブーンといった独特の効果をあげています。 ・ 国立リールフィルハーモニー (1982年12月3日、サントリーホール ライヴ) カサドシュ&リールフィルの初来日公演でのライヴ。 フランスの地方オケ、創設まもないリールフィルの合奏能力は、とてもロイヤルフィルとは比較にならない粗っぽさです。特に金管楽器が弱体で、ソロ部分の危うさと強奏での 音程のふらつきは困りもの。ただ、しなやかで独特の初々しい響きは魅力的です。 演奏は初来日の意気込みに燃え、ライヴの一発勝負を狙ったなかなか面白い演奏になりました。速めの曲は極端に早く、「古城」「ヴィドロ」といった曲は極端に遅くといった、いささかクサイ演出は見えていますが、やる気充分のオケに助けられて、面白い効果を上げています。「ヴィドロ」などはあまりに遅いテンポに、ソロが息も絶え絶えといった状況ですが、「テユイリー」でのテンポの変化の妙、「カタコンブ」から「キエフの大門」からへの盛り上がりはなかなかのものです。
(2002.04.01)
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