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今回はストコフスキー自身の録音とロジェストヴェンスキーのライヴ、そしてストコフスキーの助手だったバーメルト指揮の録音を聴いてみました。 「レオポルド・ストコフスキー(1882年〜1977年)」 ストコフスキー自身の「展覧会の絵」録音は、今のところ抜粋も含めて7種類あります。 1932年…フィラデルフィア管(ライヴ 抜粋):ラヴェル版 1939年…フィラデルフィア管:ストコフスキー版 1941年…全米青少年管:ストコフスキー版 1957年…キャピトル響(ババヤーガの小屋、キエフの大門のみ):ラヴェル版 1962年…フィラデルフィア管(ライヴ):ストコフスキー版 1963年…BBC響(ライヴ):ストコフスキー版 1965年のニューフィルハーモニア管:ストコフスキー版 この中からBBC響のライヴとニューフィルハーモニア管とのスタジオ録音を紹介します。 実は二つのラヴェル版の演奏も興味深いのですが、ラヴェル版として後日紹介する予定です。 先日ストコフスキー版のスコアを見せてもらいました。とにかくその編成の大きさには 驚きました。四管編成にホルンが8本、オプションでオルガンも加わっています。 また曲の細部にわたって様々な楽器がいろいろなことをやっていて、ストコフスキーサウンドの独特な響きの秘密を垣間見た気がしました。 今回何種類かのストコフスキー版の演奏を聴いてみたのですが、どうも使用している楽譜の細部がそれぞれ異なるようで、どうやらストコフスキー版出版後もストコフスキー自らが、演奏の度に多少書き加えているようです。 ・ ストコフスキー/BBC響 ロンドンプロムスでのライヴ。効果を狙ったどぎつさと色彩感に満ちた演奏です。打楽器強調気味の録音がこの編曲のミステリアスな雰囲気を一層盛り上げています。 「ヴィドロ」は、カイエ版に似て異常なほど速いテンポで通りすぎ、幾分滑稽味も感じました。「キエフの大門」の鳴り物の乱打に会場は大いに沸いていましたが、これはちょっとやりすぎだと思います。 ・ストコフスキー/ニューフィルハーモニア管: スタジオ録音ということで、BBC盤よりも遅いテンポの余裕の演奏。キエフの大門でのオルガン使用はよくわからないほど控えめですが、弦をたっぷり響かせたチャイコフスキー的な響きは印象的。 ・ロジェストヴェンスキー/ソビエト国立文化省交響楽団 (1983年12月14日 ライヴ ) ストコフスキー版を使用しながらも、ストコフスキー以上にロシア色を前面に出した演奏。 ヴィヴラートをかけて咆哮しまくりの金管楽器、「ヴィドロ」や「キエフの大門」、「カタコンブ」でのティンパニの強打など、ロシア節丸だしの凄まじいライヴです。 ヴィドロではストコフスキーの演奏に反してきわめてゆっくりの重苦しいテンポの演奏でした。典型的な爆演。 (RUSSIA REVELATION RV 10073 廃盤) ・ バーメルト/BBCフィルハーモニー (1995年 6月 スタジオ録音) スイスの指揮者マティアス・バーメルト(1942〜)は、アメリカでジョージ・セルやストコフスキーの助手を務めた指揮者で、数年前にはN響にも登場し、最近はBBCフィルを振ってストコフスキー編曲の多くを積極的に録音しています。 「展覧会の絵」は、ロシア的なアクの強さとは無縁の古典的な造形感に裏打ちされた演奏です。録音が非常に良く、ストコフスキーの色彩豊かなオーケストレーションを効果的に再現します。 演奏全般に漂うオルガンを聴くような均一な響きは、優秀なオルガニストであったストコフスキーの一面を示しているかのようです。 「キエフの大門」もお祭り騒ぎに陥らない冷静な演奏で、大地を揺るがす大オルガンの響きが全体の響きを効果的に支え、終末部分でサンサーンスの交響曲第3番「オルガン付」に似た大きなクライマックスを演出しています。ストコフスキー版の演奏としては、この演奏がベストだと思います。なおBBCフィルハーモニーは、マンチェスターに本拠を置く団体で、有名なBBC交響楽団とは別団体です。 (CHANDOS CHAN9445)
(2002.02.20)
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