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「展覧会の絵」を聴く10・・・・ストコフスキー編曲版1
<レオポルド・ストコフスキー編曲版  1939年>

レオポルド・ストコフスキーといえば、トッカータとフーガニ短調をはじめとするバッハのオルガン曲のオーケストラ編曲が有名ですが、当初はオケのトレーニング用としてアレンジしていて、これをたまたま演奏会で取り上げたところ非常に評判となり、以後しばしばプログラムに次第に載せるようになったということです。
ストコフスキーのオーケストラ用編曲は、ルネッサンスやバロックの声楽作品やベートーヴェンの月光ソナタやドビュッシーやラジマニノフのピアノ作品まで、非常に多岐にわたっています。

「展覧会の絵」のオケ版編曲は1939年に完成されました。この時フィラデルフィア管弦楽団の常任指揮者の地位は、ストコフスキーの手からオーマンディに移行しつつあり、翌年には完全に退いています。ストコフスキーの編曲は、全曲ではなく、「チュイリー」と「リモージュ」はカット、プロムナードもラヴェルと同じく5番目がカットされています。ロシア風の効果を目指しているようで、そのためフランスを舞台にしたとも言われる「チュイリー」と「リモージュ」をあえて外したとも言えます。
またラヴェルの編曲の影響が大きく、「サミュエルゴールデンベルクとシュミイレ」はほぼ同じ、「ヴィドロ」も冒頭はチューバソロではじめています。

古城は他の編曲と同じようにイングリッシュホルンソロ、冒頭のプロムナードは低音部分を強調した弦楽合奏により演奏されます。「殻をつけた雛の踊り」の終結部のコケーッコはピアノ譜とおり2回鳴きます。

全体の印象としては、原色的などぎつさを強調した編曲で、「ババヤーガの小屋」では多用されるホルンのグリッサンドが怪奇色を一層高めます。チャイムやグロッケンなどの鳴り物が派手に出てくる「キエフの大門」は、部厚い弦楽器で演奏される中間部のコラールなども含めて、ほとんどチャイコフスキーの序曲「1812年」の世界でした。

ストコフスキー版の録音は、ストコフスキーのほかに、ロジェストヴェンスキーとストコフスキーの編曲作品を積極的に紹介しているバーメルトの録音があります。
次回はストコフスキーの何種類かの録音を中心に、ストコフスキー版の録音を紹介します。
(2002.02.11)
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