その5 / 番外編・第4楽章冒頭聴き比べ。

ここでちょっと趣向を変えまして、さまざまな指揮者48種類の演奏による第4楽章冒頭のテンポの比較をやってみました。

方法は第4楽章の初めの6小節の時間を測ってみるというもの。

なにせ最近運動不足の上瞬間的な判断力も鈍って来ているので、誤差もありますが、ある程度の目安にはなると思います。
お気軽なお遊びとしてご笑覧下さればけっこうです。

では測定結果を早い順に並べてみましょう。

No. 指揮者 オーケストラ 時間 録音年
9秒台
1 シルヴェストリ ルーマニア ウィーンフィル 9秒57
2 ザンデルリンク ドイツ ベルリン響 9秒88 1982
3 ロジンスキ アメリカ ロイヤルフィル 9秒99 1954
10秒台
4 ロジンスキ アメリカ クリーヴランド管 10秒13 1942
5 ムラヴィンスキー ロシア レニングラードフィル 10秒33 1966
6 ムラヴィンスキー ロシア レニングラードフィル 10秒42 1983
7 バーンスタイン アメリカ ニューヨークフィル 10秒61 1959
8 ムラヴィンスキー ロシア レニングラードフィル 10秒63 1978
9 ムラヴィンスキー ロシア レニングラードフィル 10秒64 1967
11秒台
10 バーンスタイン アメリカ ボストン響 11秒10 1979
11 プレヴィン アメリカ ロンドン響 11秒16 1961
11 ストコフスキー アメリカ ロンドン響 11秒16 1964
13 ムラヴィンスキー ロシア レニングラードフィル 11秒37 1984
14 ベルグルンド フィンランド ボーンマス響 11秒45 1976
15 ムラヴィンスキー ロシア レニングラードフィル 11秒72 1973
16 テンシュテット ドイツ フィラデルフィア管 11秒89 1979
12秒台
17 プレヴィン アメリカ ロイヤルフィル 12秒02 1986
18 ストコフスキー アメリカ ニューヨークフィル 12秒03 1959
19 アーロノヴィッチ イスラエル ストックホルムフィル 12秒17 1986
20 ホーレンシュタイン ロシア ウィーンプロムジカ管 12秒20 1952
21 スヴェトラーノフ ロシア ロシア国立響 12秒54 1992
22 小林研一郎 日本 名古屋フィル 12秒62 1999
23 ゴルシュマン アメリカ セントルイス響 12秒86 1953
24 ケルテス ハンガリー スイスロマンド管 12秒96 1962
13秒台
25 ロジェストヴェンスキー ロシア ソ連文化省管 13秒04 1984
25 バティス メキシコ ロイヤルフィル 13秒04 1990
27 スヴェトラーノフ ロシア ソビエト国立響 13秒09 1977
27 ムーティ イタリア フィラデルフィア管 13秒09 1992
29 山田一雄 日本 名古屋フィル 13秒22 1986
30 ムラヴィンスキー ロシア レニングラードフィル 13秒27 1938
31 マッケラス オーストラリア ロイヤルフィル 13秒37 1990
31 オーマンディー ハンガリー フィラデルフィア管 13秒37 1965
33 ビシュコフ ロシア ベルリンフィル 13秒39 1986
34 ショルティ ハンガリー ウィーンフィル 13秒67 1994
35 アンチェル チェコ チェコフィル 13秒75 1961
36 チェリビダッケ ルーマニア トリノイタリア放響 13秒83 1955
37 A.ヤンソンス ロシア ドレスデン歌劇場管 13秒84 1984
37 リットン アメリカ ダラス響 13秒84 1999
39 朝比奈隆 日本 大阪フィル 13秒86 1981
14秒台
40 スロヴァーク スロバキア スロヴァキアフィル 14秒21 1987
41 ムラヴィンスキー ロシア レニングラードフィル 14秒29 1954
42 M.ショスタコーヴィチ ロシア ソ連国立響 14秒37 1973
43 スクロバチェフスキ ポーランド ミネアポリス響 14秒59
44 ハイティンク オランダ コンセルトヘボウ管 14秒96 1981
15秒以上
45 スクロバチェフスキ ポーランド ハレ管 15秒13 1990
46 ロヴィツキ ポーランド ロンドン響 15秒59 1966
47 ロストロボーヴィッチ ロシア ナショナル響 16秒02 1982
48 M.ヤンソンス ロシア ウィーンフィル 16秒23 1997

これは実に面白い結果となりました。シルヴェストリとマリス・ヤンソンスでは実に6秒以上もの差が!

ムラヴィンスキーの60年代以降の録音は10〜11秒台なのに1954年が14秒台、1938年12月録音が13秒台というのも面白いですね。
この10年の間にムラヴィンスキーの解釈に若干の変化があったようです。
ムラヴィンスキーのショスタコ5番といえば長い間この54年録音が初演者の演奏ということで絶大な権威があった演奏で、特にロシア系の指揮者はこの演奏の影響を大きく受けています。
スヴェトラーノフの77年盤などは第4楽章の冒頭のテンポは多少早いものの、全曲の印象はムラヴィンスキーの54年盤と非常に似ています。

またヴォルコフの「証言」が発表された直後のハイティンクやロストロポーヴィッチが異様に暗い遅いテンポになっているのも興味深いですね。
詳しくは後日個別のコメントの中で述べたいと思います。
なお国については出身や国籍にこだわらず、主に活躍した国を考慮しました。

実はここで思わぬ副産物がありました。
ムラヴィンスキーの83年(No.5 Audiophileレーベル APL101.505)は66年(No.6)と、67年(No.9 Pragaレーベル)は78年(No.8)と全く同じ演奏であることが判明しました。(聴衆のセキなどのノイズが一致しました)
この種の海賊盤ではよくあるニセモノを掴まされたようです。(^^;

今コーダのテンポも比べてみようかなどと無謀な企てを考え始めています。

(2001.1.21)

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