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今回は、イギリスの指揮者二人の演奏です。イギリス人指揮者の第九の録音は意外と少なく、初期のコーツとビーチャムぐらいで、現役では他にコリン・デーヴィスとマリナーぐらいです。 「レイモンド・レッパード(1927〜)」 ロンドン生まれ、当初チェンバロを学び1952年に指揮デビュー、 1973〜1980:BBCノーザン管首席指揮者。 その後アメリカに渡り、セントルイス響の首席客演指揮者となりました。確かインデイアナポリス響の音楽監督にもなったはず。レッパードはチェンバロ奏者と指揮者として、ルネッサンスからバロックまでの録音が非常に多く、かつてはそれらの多くが高い評価を得ていましたが、アメリカに渡ってからは、消息をあまり聞かなくなってしまいました。 第九はロイヤルフィルとのデジタル録音があります。 ・ロイヤルフィルハーモニック、アンブロジアンシンガーズ S)ウエブスター A)ウィンロジャーズ T)ヒル Bs)ヘイワード (1994年 11月 ロンドン ライヴ録音) Tringレーベルから1枚500円ほどで出ているロイヤルフルハーモニックの 一連の廉価盤シリーズ中の1枚。 レッパードの演奏は、バロック音楽では学究的なきちっとした楷書風の演奏が多いのですが、こちらは個性的でユニークな演奏でした。 第1楽章の随所で現れるタッタカタンのリズムの第二拍目8分音符を伸ばし気味にして、タッタカタァーンと演奏するかと思いきや、第4楽章歓喜の主題の第一拍をニ小節単位に区切り、始めの小節の第1拍目を極端に強調しています。そのために旋律がブツ切となり、まるで別の曲を聞いているようです。全体的にバスが軽く古典的で透明な響きですが、ここぞというところでの決めが弱く、パンチ力が不足。 第2楽章の中間部の牧歌的な気分は良かったものの、第4楽章中間部のマエストーソなど余韻に乏しく、かつては緻密なアンサンブルを誇ったアンブロジアンシンガーズの合唱も、男声が突出気味でかなり粗い演奏でした。 「リチャード・ヒコックス(1948〜)」 イギリスのストッケンチャーチ生まれ、1971年シティ・オブ・ロンドンシンフォニア を創設、1976年にはロンドン響合唱団の指揮者、1990年には古楽器による演奏団体コレグウム・ムジクムを創設。 私にとってはヒコックスといえば合唱指揮者としての印象が強く、純粋な器楽ものはいまひとつ印象がなかったのですが、イギリスのASVレーベルにはホルストの「惑星」をはじめかなり多くの録音があるようです。 ・ノーザン・シンフォニア・オブ・ロンドン、シンフォニア合唱団、ロンドン響合唱団 S)ハーパー A)ホジソン T)ティアー Bs)ハウエル (1988年 5月 ニューカッスル スタジオ録音) オケは小編成のようで、ヴィヴラートを排した古楽器風の明快で透明な響きの演奏。 第1、2楽章の戦闘的ともいえるティンパニの強打やクライマックスでのホルンの強奏によって、前半はなかなか刺激的な演奏になりました。しかし後半の2楽章は平凡な出来、 第4楽章の合唱のコントロールはさすがに見事で独唱も粒揃いですが、丁寧に歌わせることに神経を使うあまり、前半に比べて緊張感が薄らいでいる印象です。
(2003.12.02)
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