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「第九を聴く」39 テンシュテット
クラウス・テンシュテット(1926〜1996)
旧東ドイツのメルゼブルク生まれ、52年ハレ市立歌劇場の首席指揮者をはじめてとして、 数々の旧東ドイツ歌劇場の総監督を歴任。その活動は旧東ドイツ国内に限定されていた ため西側にはほとんど知られなかったが71年に西側に亡命、1972年キール市立歌劇場 音楽総監督、アメリカのボストン響などの客演で大きな話題を呼ぶ。 その後北ドイツ放送響首席指揮者、ロンドンフィルの総監督などを歴任するが85年に喉頭癌を発病、幾度か引退を囁かれながらもその度奇跡的にカムバック、奥の深い巨匠の音楽を聴かせました。

テンシュテットの第九はスタジオ録音が存在せず、85年と91年のライヴが海賊盤として出ていましたが、そのうちBBC音源による85年のライヴが、最近正規ルートで発売されました。今回はその85年ライヴを聴いてみました。

・ロンドンフィルハーモニー管弦楽団、合唱団
S)マリアンネ・へガンダー、A)アルフレーダ・ホジソン
T)ロバート・ティアー、Bs)グウィン・ハウエル
(1985年9月13日、ロンドン、ロイヤルアルバートホール ライヴ録音)

大きな広がりを持った雄大な演奏。大きくテンポが動く即興的な演奏ですが、あまりにもオケを煽りすぎた結果、第2、第4楽章では楽器のバランスが崩れ、ミスも続出となってしまいました。
第1楽章の深遠な響きと、曲が進むにつれて次第にテンポを上げていくところ、第4楽章最後のプレスティッシモの猛烈なスピードなど、まるでフルトヴェングラーのようです。
金管やティンパニが、ここぞという場所で強奏するところなどなかなかのものですが、
第2楽章の早いだけのせかせかとした落ち着きのないテンポはいったいどうしたのだろう?と疑問に思ってしまいました。
確かに熱気に溢れ白熱した演奏で、生で聴いたならばさぞ感動的であったろうと思いますが、何度も繰り返し聞くことができるディスクとなると、ちょっと苦しい印象です。楽譜の改変は第1楽章終盤のヴァイオリンのオクターヴ上げと第4楽章vor GottのフェルマータのテインパニをFに変更。
なお今回は海賊盤とBBC音源による正規発売盤の両方聴いてみましたが、あまり大差はなく、響きが拡散気味で細部も明瞭ではありませんでした。これは正規盤でも特に音質の改善は認められませんでした。
とにかくテンシュテットとしては演奏、録音ともに期待外れの1枚。
(2003.10.26)
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