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効果的な作品の演奏のためには、楽器編成や配置を大胆に変更したストコフスキー。 第九は以下の4つの録音があります。 ・フィラデルフィア管弦楽団 :1934年 スタジオ録音(英語歌唱) ・ニューヨークフィル :1947年 ライヴ録音(ストコフスキー協会盤) ・ロンドン交響楽団 :1967年9月20,21日 スタジオ録音 ・ロンドン交響楽団 :1967年9月23日 ライヴ録音 このうちフィラデルフィアとの第1回録音は初期の録音として、既に紹介しました。 2つのライヴ録音は今となっては入手が困難です。今回はロンドン響とのスタジオ録音を紹介します。 ・ロンドン交響楽団、合唱団(ジョン・マッカーシー合唱指揮) S)H.ハーパー A)H.ワッツ T)A.ヤング Bs)H.ゾーティン (1967年 9月20,21日 ロンドンキングズウエイホール スタジオ録音) ストコフスキーの演奏といえば、奇を衒った演奏が多いと思われがちですが、最晩年の演奏は、楽譜に忠実、真摯で純粋な昇華された名演奏揃いでした。 この「第九」再録はストコフスキー85才の録音で、この録音の一般的な評価は、ストコフスキーらしく楽譜を恣意的に変えたユニークな演奏というものだったですが、実際は譜面の改変はワインガルトナーによるオーケストレーションの変更の範囲と大差なく、マーラー版や近衛版を聴いた後では、ごく普通に聞こえます。 ただ、第1楽章の前半部分で休符が数カ所抜けているのと、第4楽章の始めで木管の高音部と低音弦楽器とでテンポがずれる部分があり、この部分は採り直して欲しかったと思います。それ以外は各楽器が驚くほど明晰に鳴り渡った、堂々たる演奏。 特に早いテンポで進めたダイナミックで壮大な第1楽章は素晴らしい出来でした。 ノコギリをすばやく挽くような鋭いアクセントをつけ、ベートーヴェンの記した強弱記号をほとんど無視した華麗に盛り上がる第2楽章はユニークですが、ベートーヴェンのスタイルから逸脱するほどではないと思います。 第4楽章冒頭はフィラデルフィア管との旧録音と同様、トランペットの補筆なしの譜面に忠実な演奏でした。一方第4楽章の最後の3小節は、マーラー版と近衛版と同様に木管楽器の上昇音型をホルンとトランペットにも吹かせていますが、こちらはロンドン響の緻密なアンサンブルによって見事に決っていました。 独唱も粒揃いで文句のない出来、合唱も優秀。 一度先入観を捨て、虚心になって聴いて見るべき演奏だと思います。
(2003.09.07)
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