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ルドルフ・ケンペ(1910〜1976) ドイツのドレスデン生まれ、オーボエを学び1929年からライプツィヒゲヴァントハウス管弦楽団の首席オーボエ奏者となっています。この時のゲヴァントハウス管の指揮者はブルーノ・ワルター、コンサートマスターは後にボストン響やパリ管の常任指揮者となったシャルル・ミュンシュでした。1935年ライプティヒ歌劇場で指揮デビュー、以後ケムニッツやヴァイマールなどのドイツ国内各歌劇場の指揮者を歴任するかたわら、1959年からドレスデン国立歌劇音楽監督。ロイヤルフィルやチューリッヒトーンハレ管の首席指揮者の後、その死までミュンヘンフィルの首席指揮者となりました。ケンペは、ベルリンフィルやウィーンフィルといった名オーケストラにも数多く客演し、ベートーヴェンやワーグナー、ブラームスの作品に多くの名録音を残しています。 第九の録音は、晩年に首席指揮者だったミュンヘンフィルを振った録音があります。 ミュンヘンフィル、ミュンヘンフィル合唱団、ミュンヘンモテット合唱団 S:コズート、A:ファスベンダー、T:ゲッダ、Bs:マッキンタイヤー (1973年5月31日〜6月4日) 日本レコードアカデミー賞を受賞した、ベートーヴェン交響曲全集中の1枚。 私はケンペの演奏が大好きでいろいろと聴いていますが、この第九はケンペの実力からいえばごく平凡な出来で、賞を取るほどの演奏かなぁというのが正直な気持ちです。 演奏は素朴で飾り気のない演奏、おそらくドイツで日常的に聴かれているベートーヴェンというのはこのような演奏なのでしょうか。全体に丁寧な歌い口で、渋くずっしりとした重みのある演奏だと思います。中でも慈愛に満ちた穏やかで感動的な第3楽章は最も印象に残りました。 第4楽章は、期待していたテノールのニコライ・ゲッダが、声に往年の張りを失っていてがっかりしたのと、演奏全体にもう少し祝典的な華やかさも欲しいと思いました。 ケンペは70年代に入り急速に円熟し、その芸術の完成に近づいた最中に急逝してしまいました。同じミュンヘンフィルを振った同時期のブルックナーが素晴らしい演奏であるだけに、ここでの不調は実に残念だと思います。 なお楽譜の改変は第2楽章の第2主題ホルンの追加のみでした。
(2001.10.28)
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