back top next
「ビゼーの1番を聴く」4・・・ガーディナーとマリナー
今回は、イギリスの二人の指揮者による対照的な二つの録音です。

「ジョン・エリオット・ガーディナー(1943〜)」
イギリスのドーゼットシャー生まれ、15才にしてプロの合唱指揮者として活躍、
サーストン・ダートとナディア・ブーランジェに師事。1964年にモンテヴェルディ合唱団を、1977年にイギリス・バロック管を創設し、古楽器によるさまざまな優れた演奏を残しました。1983年からリヨン歌劇場の音楽監督、北ドイツ放送響の首席指揮者を歴任、古楽器のみならず、モダンオケを振った多くの録音があります。

・ リヨン歌劇場管弦楽団
(1988年スタジオ録音)
オリジナル編成による「アルルの女」と同時期に録音された演奏。ここではモダン楽器のオケを用いたシューベルトのようなロマン的な魅力を秘めた演奏となりました。
思いきりロマンティックに歌わせた第2楽章など、まるで「未完成」交響曲の世界です。
第3楽章のトリオの入りでちょっとしたタメを演出したりといった、各所でいくつかの仕掛けがありますが、幾分中途半端な印象で、今のガーディナーならばもっと優れた演奏が出来ると思います。リヨンのオケはあまり高性能とは言えませんが、南フランス風の暖かな響きが曲想にうまく合っていたと思います。第3楽章のトリオのオーボエは、楽譜とおりのリディア調。

「ネヴィル・マリナー(1924〜)」
イギリス中部のリンカーン生まれ、ヴァイオリン奏者としてサーストン・ダートとともに
ジェイコビアン合奏団を組織、その後ロンドン響の第2ヴァイオリン首席。その後アカデミー室内管弦楽団を組織し、大胆な表現で話題になった「四季」などバロック音楽中心に名演を聴かせ、その後大オーケストラ中心の演奏活動が主になりましたが、次第に職人気質の常識的な芸風となってしまいました。ビゼーの1番は、アカデミー室内管を振った1977年と1992年の録音があります。

・アカデミー室内管弦楽団
 (1977年 スタジオ録音)
マリナーにまだ生きの良さが残っていた時代の録音。室内管弦楽団を用いた、透明でぴりっとした辛口の演奏。ガーディナーのロマン的な演奏とは対象的で、快適なテンポに乗ってハイドン風の古典的で格調の高い素晴らしい演奏を展開していきます。マリナーの職人気質がうまく作用した演奏となり、聴いていて爽やかな後味の残る名演です。こちらも第3楽章のトリオのオーボエは、楽譜のとおりリディア調。
(2002.04.21)
back top next