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「ラプソディー・イン・ブルー」を聴く16・・・エピローグ〜ラプソディー・イン・ブルーの誕生
「ラプソディー・イン・ブルーの誕生」というタイトルのCDがあります。
アメリカの指揮者モーリス・ペレスによる臨時編成のジャズオーケストラ、ピアノはアイヴァン・ディヴィス。

・ペレス指揮のジャズオーケストラ
ピアノ:アイヴァン・ディヴィス
(1986年 ニューヨーク スタジオ録音)
1924年2月11日にエオリアンホールでおこなわれた演奏会をそのまま再現したもので、全24曲。ただし曲順は当時のままでなく、最後から2番目に演奏された「ラプソディー・イン・ブルー」がこのCDでは最後に収録されています。当時「威風堂々第1番」が最後に演奏されました。
「アメリカ音楽の実験」と題された当時の演奏会ですが、今聴くと、ラプソディー・イン・ブルー以外は同工異曲で実験的な曲とは程遠い作品ばかり、もっともバンジョー入りのジャズバンドの編成で聴くエルガーはオツなものではありますが。
私が知っている曲は、「威風堂々第1番」とマクダウェルの「野バラ」くらいでした。

この録音は1924年ジャズバンド版によるものです。この録音にあたって、指揮者のペレスは、ウィリアム・カレッジのホワイトマン・アルヒーヴやワシントン国会図書館のガーシュインの自筆譜、グローフェの自筆譜など、5つの資料を比較検討し、1927年ガーシュインの自身によるジャズバンド版の録音も参考にしたそうです。
その結果、自筆譜を筆写したワシントンナショナル交響楽団のライヴラリーを使用したトーマスの1976年録音のCBS盤とは、同じ1924年版と言っても、細部に異なる点が出てきました。
ペレス盤は、練習番号15以降のオケのみの部分に2小節加え、21のピアノソロに約20小節程度のカデンツァを追加。
オーケストレーションにも、ピアノソロが初めて登場する部分の2小節目にトロンボーンの合いの手が加わったり、ラスト4小節前3拍目のピアノのトリルを木管楽器にも吹かせたりといった異なる点があります。いずれもペレスの恣意的な改変ではなく、それなりの根拠があるようです。(CDのライナーノートに書いてありますが、この部分については英語に自信がないので誤読があるかもしれません。)

演奏も、作曲者の意図にできるだけ近づけようとしたペレスの思いが伝わって来る素晴らしい名演でした。学究的な杓子定規さに陥いることなく、ピアノを常に立てながらも自己主張を忘れず、ガーシュイン意図するものに限りなく近づいた演奏と言えそうです。

今までにさまざまな「ラプソディー・イン・ブルー」を紹介してきました。実際に紹介しきれなかった演奏は数多くありますが、代表的なものは入っていると思います。
結局、自演以外で最も共感を覚えたのは、ペレスとラトルのエアチェックライヴ、そして
フルオーケストラ版ではプレートルの演奏。

曲の成立過程に作曲者がある程度認めたとはいえ、グローフェの手が加わっているために、作曲者の意図がどれだけ譜面に反映されているのか、という疑問が、私の頭からいつも離れませんでした。
特に作曲者の死後編曲されたフルオーケストラ版となると、バーンスタインの定評のある演奏を聴いても、何か違うよな、という思いは最後まで払拭しきれませんでした。
上に挙げた3つの演奏はそれらの疑問をある程度忘れさせる、強い説得力を持った演奏だったと思います。
(2004.04.05)
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