back top next
「惑星」を聴く6・・・ギブソンとロッホラン

「アレキサンダー・ギブソン(1925〜1995)」
スコットランド生まれのギブソンは、イギリスのサドラーズ・ウエルズ・オペラの練習指揮者からキャリアを始めた現場叩き上げの指揮者。活動の場がほとんどイギリス国内に限定されていましたが、シベリウスやイギリス作曲家の演奏には、渋く内容の濃い録音を残しています。特に1959年から首席指揮者を務めたスコティシュ・ナショナル管弦楽団の水準を高め、数多くの名演奏を残しています。
晩年はN響にも来演し、燻し銀の芸風を披露してくれました。

・ スコティシュ・ナショナル管弦楽団、合唱団
(1979年 11月 グラスゴー・ヘンリーウッドホール スタジオ録音)
「惑星」初のデジタル録音として話題となりましたが、演奏は渋く冷静な大人の「惑星」。近代オーケストラを駆使したスペクタクルな効果を意図的に避けているかのようです。地味ですが、奥深い味のある名演奏で、このタイプの演奏では最も成功した演奏だと思います。
深く沈潜していく“火星"、“天王星"では、スケルツォ的な華やかさをうまく演出。
オケも優秀、幾分翳のある渋めの響きがギブソンの解釈とうまく合っていました。
なおこのLPの解説には初版を使用と書いてありましたが、私には通常版とどの部分が異なるのかよくわかりませんでした。ただ、“火星"強奏部分の楽器の組み合わせが多少異なるような印象を受けました。

「ジェイムズ・ロッホラン(1931〜)」
スコットランドのグラスゴー生まれ、BBCスコティシュ響、ハレ管、バンベルク響の首席指揮者を歴任。93年には日本フィルの客演首席指揮者として、ほぼ毎年来日しました。
ベートーヴェンやブラームスなどに緻密で手堅い演奏を聴かせ、なかなかの実力者だったような印象があります。

・ ハレ管弦楽団、合唱団
(1975年  スタジオ録音)
この「惑星」は、確かロッホランの日本レコードデビューの録音だったと思います。
知名度が低かったためにホルスト自演の「惑星」とのカップリングで発売されました。
これはなかなか面白い演奏だと思います。ギブソンと同じように派手さよりも緻密にじっくり聴かせようとする傾向が見られますが、こちらは充分にオケをドライヴし、思いきってオケを鳴らした爽快さが残る演奏でした。“木星"の後半部分でテンポをぐぃっと落とし絶妙のタイミングでギアチェンジをしテンポを上げる鮮やかさは、ロッホランが並の指揮者でないことの証明だと思います。マンチェスターのハレ管もなかなかの健闘。

(2002.08.17)
back top next