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「ローマの松」を聴く21・・・エピローグと4手ピアノ版
ここに1枚の興味深い写真があります。それは二人の男性が連弾で何かを弾いている写真で、添えられた解説によると、1925年のニューヨーク、20世紀初頭のイタリア作曲界を代表するレスピーキとカゼッラが、「ローマの松」と「ローマの噴水」をウエルテミニヨンの自動ピアノのために演奏しているところ、とあります。
自動ピアノというのは、紙製のロール紙に穴のようなものを空けて演奏を記録し、再生の際には、このロールを専用のピアノにセットすると自動的に再生される、というもので、録音技術が貧弱だった20世紀初頭に流行し、当時の大ピアニストやマーラー、
グリーグ、サン・サーンスといった大作曲家も自らの演奏を記録したほどでした。
したがって、レスピーギの弾く4手版の「ローマの松」の演奏が存在することになります。しかしいろいろと調べましたが、レスピーギ生誕100年の1979年に、「ローマの噴水」は出たらしいのですが、結局「ローマの松」の行方はわかりませんでした。
もしレスピーギの演奏を聞く事ができれば、作曲者自らが考えていたテンポや解釈が、ある程度推定できたのですが。

ただ幸いなことに、4手版のCDがイタリアから発売されています。
 ピアノ:Tiziana Moneta & Gabriele Rota
というイタリアのピアニストによる実に見事な演奏です。
(1996年 録音 イタリア DISCANTA16)
この演奏を聞くと、華やかなオーケストレーションの影に隠れていた曲の素顔が自然に
浮かび上がってきます。
スカルラッティの鍵盤曲を彷彿させる「ボルゲーゼ荘の松」、ドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」とほとんど同じ世界の「ジャニコロの松」、そして古代旋法そのものの「カタコンブの松」。酷な言い方かもしれませんが、これらには作曲者の独創性はあまり感じられません。結局レスピーギは先人の偉大な作曲技法を、さまざまな形で取り入れた職人的な作曲家だったのだと思います。ただニ流の作曲家として終わらず、現代にも充分に通用しているのは、天才的なオーケストレーションの技術があったからではないでしょうか。


今までおよそ40数種類の「ローマの松」の演奏を紹介してきました。
実は、まだ紹介しきれなかった演奏もいくつかあり、その中でもルーマニアの指揮者シルヴェストリや、日本の広上、大友などそれなりに個性を主張するものも持っていましたが、演奏会も終わりましたので、今まで紹介した中から、現在の時点で、私自身が印象に残った演奏を☆印で紹介して、この連載の終わりとしたいと思います。

☆ ☆☆☆☆
・ ライナー&シカゴ交響楽団
・ オーマンディ&フィラデルフィア管弦楽団(RCA)
・ カラヤン&ベルリンフィル(来日公演)
曲が曲だけに、オーケストラの威力が物を言います。この点これらの3団体はずば抜けていました。中でもライナー盤は、何度聞いても興奮させられる名盤だと思います。

☆☆☆☆
・ トスカニーニ&NBC交響楽団(映像)
・ デ・サーバタ&ニューヨークフィル
この二つはモノラルで、録音が良ければトップにもなれたと思います。
・ チェリビダッケ&シュトウットガルト放送交響楽団
・ シノーポリ&ニューヨークフィル
・ ケンペ&ロイヤルフィル
オーケストラのショウピースとしての一面だけではなく、もっと深い新たな視点を投げかけた演奏だと思います。

☆☆☆
・ マリナー&アカデミー管弦楽団、
・ ペドロッティ&チェコフィル、
・ アンセルメ&スイスロマンド管弦楽団
このあたりはほとんど私の好みです。
マリナーは、チェリビダッケの解釈に先駆けたものとして、ペドロッティは、この曲を録音している多くのイタリア人指揮者たちのローカルな解釈の代表者として。
そしてアンセルメは、フランス的なオケの音色美と計算され尽くしたテンポ設定の妙が
印象に残りました。

番外編
・スヴェトラーノフ&ソビエト国立交響楽団
 ここまで徹底すれば立派です。

* 4手ピアノ版、実はオケ版と細かな点で少なからずの相違点があります。
オケ版出版譜には、原典版に比べていろいろな誤りがあるのではないでしょうか。
(2003.01.19)
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