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「展覧会の絵」を聴く25・・・山田一雄と朝比奈隆
今回は日本の指揮者たちの演奏から、20世紀の前半から活躍していた巨匠二人の演奏を紹介します。

「山田一雄(1912〜1991)」

・ 新星日本交響楽団
(1991年 4月28日 東京芸術劇場 ライヴ録音)
比較的多くの録音を残している山田一雄は、その晩年にまとまった形でポニーキャニオンやファンダンゴといったマイナーレーベルに集中してライヴ録音を残しました。

「展覧会の絵」は死の僅か数ヶ月前の東京芸術劇場でのライヴ録音です。
演奏は、迫り来る死の影を微塵も感じさせない若々しさと輝かしさに満ちたダイナミックな演奏です。各曲の性格付けが実に見事で、「チュイリー」の愛らしさ、「グノーム」や「カタコンブ」の不気味さもさすがの出来。オケもライヴにありがちなミスもありますが、やる気充分の熱気溢れる名演となりました。
「ババヤーガの小屋」から「キエフの大門」に突入する直前の絶妙な間、「キエフの大門」の最後の音を思いきり長く延ばして、ズバっと最後の音を切るところなど、あたかも歌舞伎の名優の舞台を見るような趣でした。


「朝比奈隆(1908〜2001)

・ 北ドイツ放送交響楽団
(1961年 5月15日 放送用ライヴ録音)
ブルックナーやベートーヴェンに名演を聞かせた朝比奈隆は、グラズノフの弟子のメッテルに師事した影響もあり、ロシア音楽も得意としていました。
海外での朝比奈隆の訃報では、ロシア音楽のスペシャリストとして紹介されていました。
「展覧会の絵」は、北ドイツ放送交響楽団との放送用録音と大阪フィルとの1999年ライヴ録音があります。このCDは、北ドイツ放送局のアルヒーヴに残されていたもので、朝比奈隆がしばしば客演した北ドイツ放送交響楽団の放送用一発取りの録音です。1961年の録音なのになぜかモノラル録音。

当時の朝比奈隆はまだ50代に入ったばかりで、後の数々の名演にくらべると、はなはだ不本意な出来。オケも潜在的な能力は高いはずなのに、ソロのミスの連発で聴いていて興ざめしてしまいました。「ヴィドロ」のチューバなど、おかしなところでブレスをするために、旋律がブツ切りとなってしまっています。
朝比奈隆の指揮は、ロシア的な重厚さを狙ったのでしょうが、スケールも小さく、私には単に重々しいだけの演奏に聞こえました。
(2002.05.01)
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