その15 / 日本の指揮者たち(3)
大友直人と広上淳一、佐渡裕
今回は40代前半の3人の指揮者による演奏です。この世代には、他に大野和士や高関健、沼響の第九を振る北原幸男、ミネソタ響の大植英次などがいて、国内外に安定したポストを持ち、今や日本の指揮者界の中心となって活躍している世代です。
特に大野和士はチェコフィルやバーデン歌劇場管を振った2種のCDが出ているのですが残念ながら今のところ未入手。

大友直人(1958〜)

小沢征爾門下、日本フィル、東京響の正指揮者を歴任、近年は日本の優秀なオケ奏者を 集めたと言われる臨時編成オケ、ジャパン・ヴィルトオーゾシンフォニーオーケストラ を振ったCDを定期的に出しています。このオケを振ったライヴCDを聴いてみました。
オケはかなり大編成のようでかなり豪華な響きがします。奏者の腕が確かなために、早いパッセージでもアンサンブルがぴったりと決まっていて、スポーツ的な快感も感じられます。全体の演奏水準は高いのですが深刻さは感じられず、お祭り気分に満ちた楽天的なもの。高価なスポーツカーに乗って高速道路をぶっ飛ばしているような感じです。
特徴的なのは、第2楽章ホルンの主題1拍前に突然の間がある個所。 どこかで聴いた解釈だと思っていたら、ギリシャの名指揮者ミトロプーロスが50年代初めの録音で同じ事をやっていました。

広上淳一(1958〜)

コンドラシン指揮者コンクール1位、スウェーデンのノールショッピング響の首席指揮者、
日本フィルの正指揮者を歴任、踊っているのようなユニークな指揮姿は印象的。
録音は1997年のノールショッピング響のCDがありました。 このオケは日本ではほとんど無名に近いのですが、ブロムシュテットやオッコ・カムといった北欧系の名指揮者たちが常任指揮者となっていた伝統のあるオケです。 聴いた感じではオケは比較的小編成のようですが、一人一人の奏者がしっかり弾いているので薄い感じはしません。演奏は気をてらったこともない楽譜に忠実なオーソドックスなもの。このような演奏を聴いていると、この曲もすっかり古典名曲として定着した印象を持ちます。ただし数多くの名演と比べるといささか自己主張が弱い印象はいなめません。

佐渡裕(1961〜)

バーンスタインのほとんど最後の弟子でブサンソン指揮者コンクール優勝、フランスの ラムルー管の指揮者、新日本フィルの指揮者。巨体をエネルギッシュに動かした派手な アクションと情熱的な指揮ぶりは大衆的な人気があります。
佐渡のこの曲の正式な録音は今のところありません。 今回は97年にテレビ東京で放送された演奏を紹介します。 オケは手兵ラムルー管、満員のパリのサル・プレイエルホールでのライヴ。 ラヴェルのラ・ヴァルスなど近代フランス名曲の初演を数多くおこなった伝統のラムルー管も今やノンキでアバウトなアンサンブルがたがたのローカルオケとなってしまいましたが、佐渡が指揮すると本気を出して演奏するのでなかなか面白い演奏を聴かせます。 紹介されたのは第1楽章冒頭と第4楽章の冒頭部分とコーダ部分という短いものでしたが、 髪をふりみだし、巨体を揺り動かした期待とおりの爆演。オケの響きは貧弱ですが、 ホールの豊かな残響に助けられて白熱した演奏となりました。第4楽章のテンポは冒頭こそ師匠のバーンスタイン似の早いものでしたが、コーダはダイナミックでゆっくりとした演奏でした。

(2001.4.22)

Back Top Next