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「ビゼーの1番を聴く」エピローグとジャン・フルネ
久しぶりにオペラ「カルメン」をLDで見ました。演奏はコヴェントガーデンの舞台、指揮はメータ、マリア・ユーイングのカルメンというもの。37年の短い生涯で多くのオペラを書いたビゼーの最後のオペラとしてあまりにも有名ですが、親しみやすく美しい旋律が実に意味深く使用されているビゼーの最大傑作。
17才の時に作曲されたハ長調の交響曲でも随所に散りばめられた旋律の美しさと初々しさは実に魅力的です。今までいくつかの演奏を聞いて見ましたが、どれも水準以上の出来なのは作品自体が良く書かれているからだと思います。

この曲の感じ方としてはフランス風の洒落た部分を主に感じるか、それとも青春の爽やかな息吹を採るかによって、様々な演奏から受ける印象も自然と異なるように思います。前者の典型的な例としてはビーチャム、プレートルの粋で愉悦感溢れた演奏。後者としてはマリナーの旧盤。この3つの演奏が私には最も印象に残りました。
が、私のベストは、実演で大きな感銘を受けたフランスの巨匠ジャン・フルネの演奏。
モノラル時代から数多くのフランス音楽の録音を残しながら、今までビゼーの交響曲の録音が
なかったフルネに待望の新録音が出ました。

「ジャン・フルネ(1913〜)」
ルーアン生まれ、今や現役最長老の指揮者となったフランス指揮者界の巨匠。
なぜか本国フランスでは実力の割り不遇な扱いですが、おかげで毎年のように来日し、
N響や東京都響、日本フィルの定期に登場。フランス音楽では現在世界最高の演奏を聴かせる
一方、モーツァルトやブラームスにも名演を残しています。
ビゼーの交響曲はたびたび実演でも名演を聴かせ、私も東京都響の定期で聴き、あまりの美しさに陶然となった記憶があります。

・東京都交響楽団
(2000年5月13日 サントリーホール ライヴ録音)
遅いテンポで、細部まで神経の行き届いた風格豊かな名演。
フルネ独特の柔らかで品格のある響きが全編漂うフランスの香気漂う演奏でした。
日本のオケがまるでフランスのオケのようにふくよかに響きます。
まさにフルネマジック。おそらくこの曲最高の名演のひとつ。






(2002.10.19)
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