・クリーヴランド管弦楽団 (1983年11月18日 ライヴ録音) 1980年にベルリン放送響の首席指揮者の地位を辞した後のクリーヴランド管とのライヴ。 1982年にマゼールが音楽監督を退いたクリーヴランド管は、1984年にドホナーニが就任するまで音楽監督は空席でした。 その間、トレーニングの厳しさで定評のあるラインスドルフがしばし客演しています。 第一、 二楽章リピート有、第4楽章496小節シンバル有。1966年ラッツ校訂版 ラッツ校訂版に忠実で、今までのラインスドルフの「巨人」の特徴であった第4楽章終盤のティンパニの加筆はありません。 クリーヴランド管独特の清潔でしなやかな響きと、きっちり整然としたラインスドルフの音楽造りで純粋培養的優等生的な演奏。 これまでのラインスドルフの「巨人」の演奏には、近寄りがたい冷たさを感じさせる瞬間がありましたが、この演奏には暖かみのようなものが感じられました。 その分油っ気が抜けているので、第一楽章や第四楽章での迫力は後退しています。 第一楽章のテンポは遅くなりました。 洗練された上品さと主部のチェロの柔らかで美しい歌が印象的。271小節のホルンのゲシュトプなしは1906年版のアイディア。 コーダの335小節目からの急加速から大きく音楽が膨らんでいきます。 この楽章の終わりで拍手がわずかに湧き上がっていました。 第二楽章は速めの演奏。 リピートの後でさらに加速しますが、この部分で音質が変わるのが不自然。 1966年のラッツ校訂版で落ちている91小節目のトランペットは演奏させていました。 第三楽章冒頭はヒスノイズに隠れティンパニがほとんど聞こえません。 楽章全体で遅めのテンポ。中間部は速めて歌曲の部分の朧のような歌は超ロマンティック。 第四楽章も速めの一定のテンポ。 175小節Sehr gesangvoll(たっぷり歌う)付近の自由な揺れの上質な弦楽器の響きが美しく。ffでもあくまでもクリアな響き。タメをつくらずとにかく一定のテンポ、あくまでも冷静。コーダは急速に加速。終盤のホルンの補強はないようです。 静かにして軽やか。歴史を経た木造建築ような静かで落ち着いた品格を漂わせる演奏でした。 今回聴いたのは裏青のLucky Ballというレーベルの海賊盤CD―Rです。正規の音源ではなくFMのエアチェック録音からのようです。 ステレオとはいえサーというノイズが大きく、第三楽章冒頭のティンパニなどはほとんど聞こえません。音そのものにも力がなく、そのことが演奏の印象に大きく左右しています。 (2015.04.25) |