「巨人を聴く」36・・・・独墺系の指揮者たち4  ケンペ
ドレスデン生まれ、最初オーボエを学び1929年からライプツィヒゲヴァントハウス管弦楽団の首席オーボエ奏者となっています。
1935年ライプチヒ歌劇場で指揮デビュー、以後ケムニッツやヴァイマールなどのドイツ国内各歌劇場の指揮者を歴任するかたわら、1959年からドレスデン国立歌劇音楽監督。
ロイヤルフィルやチューリッヒトーンハレ管の首席指揮者の後、その死までミュンヘンフィルの首席指揮者。BBC響の首席指揮者とも兼任。

ケンペが主に録音契約していたEMIの70年代までのマーラー録音については、クレンペラーやバルビローリといったマーラーを得意とした指揮者の独占状態でした。
大編成を要する第3、8番を除く第2,4、7、9番と大地の歌がクレンペラー、バルビローリが第5,6、9番。

マーラーに関してはケンペの出番はほとんどなく、フィッシャー・ディースカウとの「さすらう若人の歌」のモノラル録音のみでした。

ところが、最近になって第1、2,4,5番と大地の歌などの60年代のライヴが続々と出てきて、マーラーの音楽が一般的になる以前から、ケンペは演奏会では取り上げていたことがわかります。


・BBC交響楽団
(1965年  BBCスタジオ   放送用ライヴ録音)
BBC放送が収録した放送用ライヴ。1965年の収録ですがモノラルです。

第一楽章リピートなし第二楽章リピート有り、第四楽章495小節のシンバルなし。
1906年版使用(おそらく1945年のブージー版)

きっちり端正、適度にロマンティックな清潔感のある演奏でした。
健康的で中庸の美徳の典型のような演奏です。
第二楽章や第三楽章中間部ののびやかでロマンティックな歌い上げが印象に残ります。

第一楽章の序奏からゆったり余裕のテンポ。響きに透明感があり爽やかに進行。
ティンパニは全体に控えめなのに対して第三楽章のタムタムが大きめなのは録音に原因がありそうです。

演奏そのものは淡泊ですが、第三楽章前半での摺り寄って来るようなチェロの響きや、中間部のポルタメント気味の弦楽器の歌わせかたに世紀末の気配が漂います。

大きな強弱の落差の中で一定のテンポで進行するものの、第四楽章になると音楽そのものがにわかに重くなり表現も濃厚になっていました。

第四楽章の150小節からのフェルマータの連続部分はテンポを落とさずにそのままに進行。458小節めを大きく引き伸ばしているのが個性的。
496小節のシンバルは入りませんが、ここで大きくテンポを落とし、音楽が大きく揺れていました。
終盤のホルンの補強はおこなってないようです。


今回聴いたのはBBCLEGENDから出ているCDです。
各楽器は明瞭ですが、1965年の放送用ライヴとしてはモノラルなのが残念です。
(2015.06.03)