「巨人を聴く」13・・・・ワルターその2
・ニューヨークフィルハーモニック
(1954年1月25日 ニューヨーク スタジオ録音)
ワルター一回目のスタジオ録音。
第一、 二楽章のリピートなし。第四楽章496小節のシンバルなし。
使用楽譜は1906年版(SP1)。

幾分緩いワルターの手綱にオケが暴走しているきらいはありますが、速いテンポで揺れも少なく颯爽とした青春の息吹が感じられます。
遅いテンポの芳醇なコロンビア響との再録音に比べるとまるで別人のような演奏でした。
第三楽章では道化のようなパロディ感を強調。

第一楽章はじめ軍楽隊のシグナルのトランペットはミュートなし。
速めのテンポでかなり強引にオケをドライヴ。62小節の1.2番ホルンの動きや、チェロの主題のフレーズは1906年版に忠実。再録音ではじっくり歌わせていた200小節以降の夜が明ける部分も、あっさりと通り過ぎていきます。終盤のゴウゴウと鳴るコントラバスの威力が印象的。

第二楽章も素っ気ないほどの速いテンポの直截な演奏。
トリオ導入部分のホルンソロはかなり早く、トリオに入ってもスピードは落ちませんでした。1906年版と特徴である155小節と326小節のティンパニの荒々しいまでの強奏がバーバリスティックな気分を盛り上げます。最後のバスドラムの音も強烈。

第三楽章の中間部では、軍楽隊のエコーのバスドラムとシンバルの掛け合いの部分でテンポを落し第一拍を強調しながらズンドコズンドコの滑稽感を演出。
冒頭回帰の後半部分は幾分テンポを速め、最後の二つの音はベースの深く重量感のある音で響いていきます。

音楽が軋んで悲鳴を上げているかのような第四楽章は、緩急差も大きく豪快に進めていきます。598小節で一気にテンポを速めて狂乱のコーダへ突入していくのは、コロンビア響との再録音に聴かれなかったド迫力。
最後のホルンの補強は、トランペットとトロンボーンは使用していません。

勢いの中に多少の粗さはありますが、ガッツリ系のカロリーの高さと歌い方に愛が感じられるのはマーラーに関係の深かったオケだからでしょうか。
楽譜は1906年版に忠実。

この当時のニューヨークフィルにマーラーの指揮を知る楽団員が残っていたかどうかはわかりませんが、猛者揃いのニューヨークフィルが全力を出し切っていることが感じられる熱い演奏でした。

今回聴いたのは、オランダフィリップスから出ていたLPです。
細部は明瞭というわけではありませんが力のある音でした。
(2014.06.04)