・ロンドンフィルハーモニー管弦楽団 (1947年11月6日 ロンドン ロイヤルアルバートホール ライヴ録音) コンセルトヘボウ管への客演からほぼ2週間後にロンドンを訪れた際のライヴ。 この数日後、ワルターはキャサリン・フェリアーを独唱者に迎え、ロンドンフィルとベートーヴェンの「第九」を演奏し、その録音も残っています。 この時期のロンドンフィルは、第二次世界大戦の痛手に加えて、創設者のビーチャムが手を引きロイヤルフィルを新たに創設(1946年)、さらにフィルハーモニア管の創設(1945年)直後で、その二つのオケがHMVや英コロンビアといった大手のレコード会社と契約を結んだこともあり、苦難の時代でした。 このようなピンチの時期に、大指揮者ワルターを迎えた演奏会。 聴いていると、ロンドンフィルの健在を世に問うような、一発逆転の意気に燃えた楽団員の心意気のようなものが伝わってきます。 直前のコンセルトヘボウ管とのライヴとはまた異なる雰囲気の、熱く燃えた演奏です。 メンバーの流出も予想され、ホルンなどかなり音を外してはいるものの、オケ全体の技量は見事なものです。 第一、二楽章のリピートなし。第四楽章練習番号「44」のシンバルなし。 使用楽譜は1906年版(SP1)。 ワルターのしなやかな棒に、メロウですっきりとした透明感の感じられる響きのオケが良い状態で乗っています。とても初顔合わせとは思えないほど、ロンドンフィルは敏感にワルターの棒に反応。 細部まで彫琢が行き届き、相当なリハーサルを積んだことが想像できます。 第一楽章最初のかっこうのオーボエのヴィヴラートが印象的。 遅いテンポで主部は進み、123小節のティンパニのトレモロにクレシェンド付加 265小節からのトライアングルなし。快適なテンポで進み、ホルンの強奏からしだいに熱を帯びていきます。 トリオを含め速いテンポで駆け抜ける第二楽章もオケは好調。すっきり爽やか。 155、326小節のティンパニ有。 第三楽章は一転してモソモソとした鈍重さが感じられます。チューバソロではスラーではなく、一音一音ぶつ切りなのがユニーク。 軍楽のパロディのあとの、冒頭を回顧する63小節の弦楽器のppがすごい緊張感。 続く73小節で突如速めて中間部に突入。この部分からの蕩けるようなロマンティックな響きも夢のような良い雰囲気。 速いテンポの怒涛のフィナーレは、アンサンブルの乱れもなく端正に進めていきます。 第1ティンパニの乱打と第2ティンパニのトレモロの掛け合いの後、340小節で見せる微妙な間は絶妙。 後半は雄渾に盛り上がります。 619小節からのホルンのみのファンファーレ風の部分で、トランペットを重ねていました。これはこのライヴ固有の改変ですが、非常に壮麗な効果を上げていました。 627小節で微妙に減速、659小節の大きなペザンテ(重々しく)から672小節の金管群を大きく引き伸ばしながら、あたかも弓から矢が放たれたかのように、音楽が飛翔する部分など、とても落ち着いて聴いていられぬほどの迫力でした。 686小節からのトランペットの3連符で大きく減速する部分も良く、冷静から熱狂への移行が自然な演奏でした。 ホルンの補強は、ホルンのみのようです。 今回聴いたのはTESTAMENTのCD。 残念ですが音は良くありません。 (2014.07.05) |