「巨人を聴く」29・・・・独墺系の指揮者たち  ハンス・ロスバウト
「ハンス・ロスバウト(1895〜1962)」
オーストリアのグラーツ生まれ、25才にしてマインツ市立音楽学校の校長。
フランクフルト放送響、ニュンヘンフィル、南西ドイツ放送響の音楽監督を歴任。
ロスバウトは現代音楽の紹介者として知られ、ピエール・ブーレーズに大きな影響を与えています。 

ロスバウトのマーラーはライヴ録音がいくつか有り、今のところ第1番(2種)、
4、5,6,7(2種)、9番、「大地の歌」の録音が確認されています。
第7番の演奏はこの曲の初録音でした。

「巨人」は以下の2種があります。

・1954年     ベルリンフィル     ライヴ録音
・1961年     南西ドイツ放送響    ライヴ録音

・南西ドイツ放送交響楽団
(1961年9月11−16日    バーデンバーデン  ライヴ録音)

創設以来ロスバウトが音楽監督を務めた南西ドイツ放送響のライヴ。現代音楽の紹介者として名高いオケと指揮者のマーラーです。

第一、 第二楽章リピートなし。第4楽章496小節シンバルなし。
1912年版(DP3)使用。

端正にして適度にロマンティック。熱狂からは遠いものの清潔感の感じられる演奏でした。

第一楽章冒頭の弦楽器のフレジョレットではコントラバスのバランス大きめ。
主部のテンポは遅く、暖かく優しげに音楽は進行。
118小節から自然に加速していき、ゆったりとしたロマンティックな気配が漂います。
274小節で大きくテンポ揺らし、最後の418小節めから急加速

第二楽章は醒めてドライなワルツ。1912年版に忠実。

第三楽章冒頭のコントラバスソロはかなり貧相でオソマツな出来。
中間部の歌曲の部分の導入部、87小節めからチェロの内声部を強調し、大きく浮かび上がらせながらロマンティックに歌わせているのが印象に残りました。
137小節の1番ホルンのゲシュトップ指示の小節で4拍めをオープンにして強調。

第四楽章は157小節の4拍めと続く旋律の1番ホルンを強調。
375小節の中間部のクライマックスで大きく小節を引っ張りタメを作ります。
嵐が去った後、ホルン7本がゲシュトップでこだまのように応答する部分の大太鼓のトレモロが落ちているようです。
ヴィオラの導入に続く554小節でチェロの突然の強調、コーダの前、595小節から加速。632小節の Vorwarts(テンポ前へ)でもそのままのテンポで終結部に突入。

コーダのホルンの補強はトロンボーンのみのようです。

クールで冷静、個別の奏者のばらつきはあるものの、ライヴとしてはアンサンブルの破綻の少ない完成度の高い演奏でした。

今回聴いたのはCD初期に海賊版ライヴの演奏を盛んに出していたイタリアのレーベル、Stradivariusから出ていたCDです。年代相応のモノラル録音。


(2014.12.31)