「チャイコフスキーの5番を聴く」41・・・・フランスの指揮者たち、モントゥーその5
・ボストン交響楽団
( 1957年 4月12日 ボストン  ライヴ録音)
ボストン響客演時のライヴ。
土曜日の夜のコンサートというラジオのアナウンスから始まります。

力の入った若々しいエネルギーが最上の形で爆発した燃焼度の高い演奏で、翌年のスタジオ録音を凌ぐ出来です。

熱狂の中に漂う巨匠の風格。情に溺れずしかして仄かな哀愁が漂う素晴らしい名演です。
録音がよくないので響きに粗さが感じられるのが残念。


第一楽章序奏から深い低音。主部からも気合いの入ったド迫力。第2主題の弦楽器のsffの強調もばっちり決まり、速度を上げながら展開部へ向かってたたみかけるブラスが荒れ狂い、終盤の458小節あたりから速度と音量をあげていくのもすさまじいばかり。
コーダの最後では急加速。

第二楽章は録音が貧弱なためにせっかくのチェロの歌の音が痩せていて楽しめないのが残念。演奏は他のモントゥーの演奏に比べるとかなりあっさり系。
風雲急を告げる90小節目あたりから急加速。116小節のanimandoでは速めのテンポで揺れていき、後半の機関銃のようなブラスのタンギングも驚異的です。
164小節ではfffがあまりにも強烈で録音に急にリミッターがかかっています。

ふわりとした軽やかな第三楽章
43小節からの主題の歌い直しの微妙なルバート、後半終結部に入ると少し早めていました。

続く第四楽章では、最初のブラスの強奏でテンポを大きく落としています。
Allegroへ入る前の静から動きへの変換も鮮やか、ここでティンパニの一発付加。
快速に飛ばすアレグロは迫力充分ですが、録音が十分に捉えきっていないのが残念。

モントゥーの一環した解釈だった189小節めの大ブレーキのあと、運命の主題が再現。運命の主題は短くさっぱりと切っていました。
ますますの加速手に汗握る興奮。オケのヴォルテージも急速に上昇。
気分を変えてのその後の急加速からさらに凄まじいまでの快進撃。
452小節の再びの大ブレーキから472小節のモデラートアッサイは勝利の凱歌と化していました。最後のキメも見事。

第三、四楽章の身軽な動きはとても82歳の棒とは思えないほど。
これほどモントゥーが熱くなった演奏は珍しいと思います。

手持ちはアメリカの個人の音楽愛好家が撮り溜めたFMエアチェック録音を私的にCD−Rに複製して売っていたDisco Archivaのもので、モノラル録音。

曲の前後のアナウンスと聴衆のざわつきがリアルに入り、大変臨場感のあるものですが、
音楽本体の音は固く残響が感じられない粗い音でした。
(2015.03.23)