・ レニングラードフィルハーモニー管弦楽団 (1956年6月 ウィーン、コンツェルトハウス大ホール スタジオ録音) レニングラードフィル欧州楽旅の際のドイツ・グラモフォンへの初録音。 この時ムラヴィンスキーは第5番と第6番を録音し、第4番はザンデルリンクが 担当しました。 4年後の同じグラモフォンの録音と解釈においては大きな差はありませんが、ダークな音で残響も多く、陰鬱な雰囲気はこちらの方が強く出ています。 第一楽章冒頭のほの暗いクラリネットソロの下に付ける弦楽器の四分音符は、あたかもラフマニノフの曲における弔鐘のように暗く響きます。 続くクラリネットとファゴットによる旋律では、フルートとクラリネットの組み合わせに受け渡され次第に明るく発展していき、最初に音楽が大きく膨れ上がる80小節から100小節まで到達する道程はお見事なものです。続く第2主題の優しき対比は1960年録音と同じ。 170小節のMolt piu tranquilloに入る部分はテンポを落とさず突入。188小節からのStringendoは重い加速で、この部分は1960年録音とは異なります。 254小節のフォルテシモも重い響き。350小節のトロンボーンとチューバの甘くせつない合いの手が印象的。427小節の弦楽器のユレはここでも大きく、この部分は1960年録音盤の方が動きは自然です。 第二楽章は大きな船に乗り穏やかな大海原ゆっくり進むような安定感を感じさせます。 ホルンソロ後半からのTempoTへ向かう部分から、にわかに動きが大きくなります。後半はバレー音楽のような音楽のスムースに流れ、落ち着いた優雅さが支配している第三楽章を経て静けさ漂う開始の第四楽章へ。 快速に進むAllegro vivaceへ突入直後のティンパニの一発はなし、シャープにして停滞なく音楽は流れ、チェロ・コントラバスのフォルテシモからピアニシモへの鮮やかな切り替えも見事。明から暗への変転を繰り返しながら音楽は徐々に緊迫感を増していきます。インテンポの中で433小節のMolt vivace前の一瞬の減速は名人芸。 ホルンの最後のファンファーレは、胸のすくような素晴らしい音でした。 今回聞いたのは独逸グラモフォンのオリジナルズのCD2枚組。モノラル録音です。細部に明瞭度を欠き、響きが鈍重なのが気になりました。ムラヴィンスキーの芸格を十分に捉えきれていない印象です。 (2011.04.14) |