「チャイコフスキーの5番を聴く」17・・・ロシアの指揮者たち2 ムラヴィンスキーその3
・モスクワ放送交響楽団
(1948年 モスクワ スタジオ録音 第3楽章のみ)

SP期の旧ソビエト連邦国営レコード会社メロディアへの録音。
第3楽章のみですが、ムラヴィンスキーの初期のチャイコフスキー解釈を知ることができる貴重な録音です。
ムラヴィンスキーの数多いチャイコの5番の演奏のうち、レニングラードフィル以外のオケを振った録音は、ほかにはソビエト国立響を振った1949年のライヴ録音があります。

1拍めをわずかに強調、149小節のクレシェンドはなく228小節からのヴィオラの内声部の刻みを浮き出させているのがユニーク。241小節からのクラリネットとファゴットが奏でる第4楽章を予見させる動機が出る部分ではテンポを極端に遅くして強調していました。

遅いテンポのロマンティックな演奏で、のびやかさの中に甘く感傷的なテイストが漂います。後のムラヴィンスキーの研ぎ澄まされた厳しさは片鱗すらありませんでした。

今回聴いたのは平林直哉氏が立ち上げたSERENADEレーベルのCD。
若き日のセルやクナッパーツブッシュ、スメターチェク、クリュイタンスの現在入手困難なレア音源を集めた貴重なCDですが、苦労した割には売れなかったということで現在廃盤。音は丁寧な復刻の良い音です。
(2011.04.27)