「ウイリアム・スタインバーグ(1899〜1978)」 ケルン生まれ。ケルン音楽院でアーベントロートに指揮を学び、ケルンのオペラハウスでクレンペラーの助手としてキャリアをスタート。その後プラハのドイツ歌劇場を経てフランクフルト歌劇場の音楽総監督となりましたが、ユダヤ系のため引退を余儀なくされ、イスラエルに移りパレスチナ響(現イスラエルフィル)をヴァイオリニストのフーベルマンとともに設立。 戦後はアメリカに活動の場を移し、NBC交響楽団の指揮者の後、バッフォローフィルの音楽監督。1952年から1976年ピッツバーグ響の首席指揮者となり、一時はボストン響の音楽監督も兼ねていました。 スタインバーグは、ピッツバーク響の指揮者の就任直後の1952年から57年にかけて、CapitolやComanndoといったアメリカのレーベルに数多くの録音を残しました。 ・ ピッツバーグ交響楽団 (1950年代後半? ピッツバーグ スタジオ録音) 米のメジャーレーベルCapitolのクラシック部門への録音。 録音年代ははっきりしませんが、1957年の英GRAMMOPHON誌に新譜広告が出ているので、56年か57年頃の録音かと思います。 明るく健康的なチャイコフスキーでした。各楽器のバランスも見事、ピッツバーグ響の確かなアンサンブルで隙なく磨きぬいた演奏です。 第一楽章は過度に重々しい開始ですが、第一主題はレガート多様気味。 21小節からの弦楽器の主題の堂々たる歌い方は素晴らしく。フレーズの終わりを長めに取るのが特徴的。コーダの自然に加速しつつの緊迫感はお見事。 第二楽章も序奏は深く重々しく開始。ホルンソロは固めでメタリックなアメリカのホルン独特の音です。チェロに受け継がれた主題は非常に美しく響いていました。 第三楽章も優雅で甘く、それでいて癖のない楽天的なワルツ。中間部は猛烈な速さで飛ばしますが、ピッツバーグ響は一糸乱れぬアンサンブルで応えます。微妙なテンポの揺れも心地良いもの。 第四楽章冒頭もたっぷり堂々たる開始。主部はリズムの軽快さよりもリッチな響きでたっぷり歌いますが、中間部210小節から多少持たれ気味となります。 オケを思い切り鳴らしながらの嵐のような最後は爽快。 難しいことを考えずに甘く豊麗にしてよく歌った演奏で、スタインバーグのオケを充分に鳴らす技は見事なもの。オケがうまいので聴いていて楽しめました。 今回聴いたのは米キャピトルの初出LPです。モノラルながら見事な再生音。 ちょうどステレオへの移行期にあたり、オリジナルステレオ盤が存在するかもしれません。 なお、米ピックウィックから出ていたLPは、同一音源のモノラル録音を疑似ステレオ化したものです。 (2011.08.21) |