「ハンス・シュミット=イッセルシュテット(1900〜1973)」 ベルリン生まれ、ウッパタールの練習指揮者から始まり、ロストック、ダルムシュタットの各歌劇場の指揮者を歴任、その後30代でハンブルク国立歌劇場の首席指揮者となり、1942年にはベルリン・ドイツ歌劇場の総監督に就任しています。戦後、ハンブルクの北ドイツ放送交響楽団の創設に深くかかわり、戦争でドイツ各地に散り散りになっていた優秀な演奏家たちを集め、このオーケストラを短期間で世界的なオーケストラに育て上げました。 イッセルシュテットのチャイコフスキーの交響曲第5番には2種の録音があります。 ・1952年 ハンブルク放送響 スタジオ録音 ・1970年 北ドイツ放送響 ライヴ録音 ・ ハンブルク放送交響楽団(現 北ドイツ放送交響楽団) (1952年 9月、10月 ハンブルク スタジオ録音) ドイツ風の堅実さとでも言うのでしょうか、アンサンブルをがっちり固めた叩いてもびくともしない鋼鉄のような演奏。 第一楽章冒頭は重苦しい気配で始まりますが、38小節主部のAllegro con animaから一転、弦楽器は軽く柔らかな響きでコントラバスはほとんど聞こえません。 149小節のホルンソロの部分から次第にテンポを落し、次のUn pochettino piu animatoで速めて気分を転換。214小節からの展開部は重苦しい沈鬱な雰囲気になってしまいました。373小節のmolt esp.で纏綿と歌い、コーダで速めています。 第二楽章Con Motoの弦の刻みの音が急に大きくなるのが気になります。線のキツさは録音に原因がありそうです。クラリネットソロの弱音のコントロールが見事。 運命の主題が全ブラスで鳴り渡った後、108小節Tempo Tの数小節ではテンポを大きく落とし、弦楽器のピチカートのみを大きく強調して第一主題に回帰。 149小節のff指示をpとして大きくクレシェンド。最後の2小節では細心の注意でデクレシェンドさせてpppp。 第三楽章はちょっと気取ったニヒルなスローワルツ。 201小節のファゴットソロに付ける弦楽器の野暮なほどの強調は意図したものでしょうか。 弱々しいほどの小さな音で開始する第四楽章は、Allegro vivaceもほぼそのままのテンポで冷静に進みます。ここで210小節から304小節までカット。 394小節での脇役のトロンボーンが突然の強奏。これはなんだ? 無駄のない引き締まったオケのアンサンブルに、実直なまでにひたすら自分の仕事に専念 するイッセルシュテット。 根本的な解釈は、既に紹介したケンペンの演奏と非常に似ていました。50年代までのドイツ系の指揮者の共通な解釈でしょうか。 特にカットの有無も含めて第四楽章で顕著ですが、ケンペンほどのテンションの高さがないだけ、演奏としての魅力は少なくなっています。 今回聴いたのは国内盤のCDです。50年代前半としては相応の音質ですが、高音強調気味で音が痩せているのが気になりました。 (2011.09.02) |