・バイエルン放送交響楽団 (1975年3月20日 ミュンヘンヘラクレズザール ライヴ録音) ケンペ晩年のライヴです。端正にしてロマンティック。 ムラヴィンスキーとは異なるアプローチから解釈の頂点に迫った演奏だと思います。オケが対向配置なのは当時バイエルン放送響を率いていたクーベリックの影響でしょうか。 第一楽章冒頭の遅いテンポはスタジオ録音と同じ程度。再現部のクラリネットとファゴットが即興的な動きを見せます。372小節からのMolt espres.では大きく歌い、競い合う木管楽器と弦楽器の掛け合いが見事。コーダではテンポを幾分速めていました。 第二楽章は遅くたっぷりと歌うエレジー。ホルンソロは素朴なようでいてしみじみ味のある歌い口。続くチェロによる主題は自由にテンポが動きます。112小節からのいたわるような歌からの150小節へ感情の爆発までの変転は非常にドラマティック。 コーダでは次第に鎮静していく過程で178小節2拍め裏拍の8分音符を際だたせていました。 第三楽章の細めの響きは録音に問題があるかもしれません。対向配置がここでは左右逆?のようになっています。速めのテンポで進み、56小節のファゴットソロの酔っぱらったようなフラつきは意外な展開。 64小節もテンポは遅くならずそのまま。177小節のクラリネットとファゴットのメロディの前に微妙なタメがありました。196小節のファゴットソロでテンポを微妙にずらす遊びが有ります。 雄大な第四楽章。堂々たる序奏ではこれから何かが起きるような期待が膨らみます。 Allegro vivace直前でケンペの棒がリハーサルにない動きをしたようでこの数小節間で指揮者とオケのスリリングなバトルが展開。 ここで2番オーボエが一瞬出遅れ他のパートに波及しそうになりますが、木管セクションがすぐに立ち直るのが聴きものです。特にこの部分のテンポの動きとフルートが合わせていくのは凄いもの。 そのような中でティンパニの長いトレモロから自然にAllegro vivaceに突入していきます。 Allegro vvaceはまさに疾風怒濤の進軍、素晴らしい迫力です。 210小節から加速。一度収まった再現部前の288小節の木管楽器のアクセントを強調。再現部に入る1拍めのffがさらに強烈。 終結部の熱気は凄まじく、ティンパニのアクセントも見事に決まり手に汗握る怒涛のフィナーレ。 スタジオ録音以上の名演でした。洗練された自然なテンポ運びの中のロマンティックな歌わせ方がスタジオ録音よりも前面に出ていました。オケの引き締まったぱりっとした響きも印象的。 この演奏はケンペが亡くなった直後にNHKFMの追悼番組のような形で放送されました。 今回聴いたのはORFEOから出ているCDですが、第三楽章のように左右が逆になるような場面があります。 (2011.10.21) |