「チャイコフスキーの5番を聴く」31 独墺系の指揮者たち7・・・・・カラヤン
「ヘルベルト・フォン・カラヤン」
チャイコフスキーを重要なレパートリーとしていたカラヤンは交響曲全集も残しており、
第5番には映像を含む6種のスタジオ録音があります。

・1952年   フィルハーモニア管
・1965年   ベルリンフィル
・1971年   ベルリンフィル
・1973年   ベルリンフィル        映像
・1975年   ベルリンフィル
・1984年   ウィーンフィル        映像

さらにライヴでは4種
・1953年   RAIトリノ交響楽団
・1969年   ベルリンフィル
・1973年   ベルリンフィル
・1979年   ベルリンフィル        

・ フィルハーモニア管弦楽団
(1952年5,6月、1953年8月 ロンドン キングズウェイホール スタジオ録音 )

名プロデユーサー、ワルター・レッゲが手がけたカラヤンのこの曲最初のスタジオ録音。
カラヤンとフィルハーモニア管は「悲愴」の1955年録音もあります。
http://www.numakyo.org/c_tchai6/19.html

ロマンティックにテンポを動かし、とくに凄みのあるピアニシモはカラヤンならではのもの。後のカラヤンの演奏に聴かれるレガートの多用は既に聞かれます。
第一楽章中間部の叩きつけるようなフォルテや、フィナーレの豪快なホルンの咆哮など、カラヤンにしては感情を顕わにした部分があるのが面白いと思いました。

第一楽章序奏はゆっくりロマンティックに開始。Allegro conanimaの消え入るような弦の刻みに乗ってクラリネットが密やかに主題を歌います。82小節の最初のクライマックスには巨大な音の壁が立ち上り、149小節のピアニシモの美しさとしなやかな旋律の歌わせ方と160、180小節のテンポの揺れが印象的。
展開部直前の215小節からテンポを速めていき、頂点の297小節で叩きつけるようなフォルティシモの連打。この荒々しさは後のカラヤンの演奏からは聴かれないものです。
再現部で鎮静化すると336小節にはオーボエのスタッカートをさりげなく強調。
381小節のsffのことさら強調し、385小節からのMeno animatoは大きくペッタリの揺れて425小節で大きくテンポを落としていき、(モルトピウトランクイロの前)大きな揺れていきます。コーダは速めて威風堂々たる凱旋将軍のように終結しています。

第二楽章は張りつめたような緊張感に満ちた序奏で始まります。息の長いホルンソロはデニス・ブレイン。20小節めのリテヌートでの自然な力の抜き方はうまいものですが、ブレインにしては普通の出来です。
続くホルンとオーボエとの対話ではオーボエの美しさに耳を奪われます。3番ホルンの入る前32,33小節でテンポを大きく動かしていました。
fffで出る運命の主題の99小節からは速めのテンポですりぬけます(インテンポ)
終結部170小節のTempo Tからの弱音コントロールのうまさはカラヤンならではのもの。

第三楽章は新雪の斜面を滑走するようななめらかな開始。
録音はボケ気味ですが各声部は明快で、99小節のヴァイオリンのピアニシモもはっきりと聞こえました。終結部に向かってしだいに遅くなります。

第四楽章冒頭は強めの音量で重く引きずる極端に遅く開始。
33小節からの長いクレシェンドの始まる前から少し加速しAllegro vivaceアレグロヴィヴァーチェの開始58小節の1拍めにティンパニの強打が入ります。
主部の民族舞曲風の展開はカラヤンとしては平凡な出来。
160小節から僅かに加速、フォルティシモのブラスのレガートには抵抗を感じました。

展開部の始まる311小節の1拍めTempoTで小節の拍が字余りとなり音楽の気分が唐突に変わるのは編集ミスだと思います。

終結部の導入451小節からの突然の駆け抜ける速さが唐突で、続くコーダとの繋がりが固く身構えたような不自然な動きとなっていました。
548小節のトランペットから引き継ぐホルンのファンファーレは理想的な音で強烈に響きます。この部分が演奏の最大の魅力的な部分です。

良くも悪くも若い演奏でピアニシモの緊張感とカラヤンらしからぬ粗削りな部分には多少の魅力を感じるものの、期待していたデニス・ブレインのホルンソロはさほどのこともなく、仕上げの荒っぽさが気になりました。

今回聴いたのは70年代に出た国内盤LPです。
モノラルを人工的にステレオ化したものなので焦点の定まらぬボケた音です。
オリジナルのモノラルで聴けば印象が変わるかもしれません。
(2012.01.15)