・ ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 (1965年9月22,24,27日、11月8日 ダーレム キリスト教会 スタジオ録音 ) ベルリンフィルとの最初のスタジオ録音。 70年代初めの頃までムラヴィンスキー盤と人気を二分していた演奏です。 カラヤンとベルリンフィルは、同年11月5,6,7日の演奏会でこの曲を取り上げています。11月8日の録音は実演でうまく行った部分をやり直し、9月の録音と差し替えたのではないかと思います。 強靭な鋼のようなベルリンフィルの合奏力に舌を巻きます。力のあるオーケストラが鳴り切った豪奢な音楽を聴く喜びに浸れる演奏。 第二楽章中間部の弦楽器のピチカートのみの部分のように、極端なデフォルメもありました。 第一楽章序奏は大きな広がりを保ちながらゆっくり暗い重いレガートの音楽。 Allegro con animaの弦楽器の8分音符は、柔らかな響きでムラヴィンスキーと対照的。 インテンポのまま116小節からの第2主題へ。 170小節のmolt tranquilloも感情が生のまま出たような激烈なフォルテも聴かれるものの、オケの力量に余裕があり煩ささは皆無。 コーダの前の477小節から微妙に加速しつつも終盤の538−540小節ではテンポを落としてドスの聴いたppで終結。 第二楽章は旋律を思い切り甘く歌わせていくカラヤンのチャイコフスキーの最も特徴が出た楽章だと思います。ゆっくりとしたホルンのソロに絡み合うクラリネットが微妙に速く音を出していますが、これがまた熟した甘さ醸し出しています。 オーボエソロはローター・コッホでしょうか。 続く美しい木管楽器群の絡み合いも聞きもの。続くチェロの飴色の響きも印象的。 楽器が壮絶に鳴り切った嵐の過ぎ去ったあとの、108小節から4小節Tempo Tの弦楽器のピチカートのみの経過句の部分は極端にテンポを落としていました。 その後のロマンティックな弦楽器の歌はちょいとやりすぎか。 第三楽章は一転して軽妙洒脱。中間部の速いパッセージの難所も余裕で通過。 終結部の入り口での239小節2拍めの8分休符の微妙な間も見事。 第四楽章は弓をべったり弦に押し付けたかのような重厚な序奏。Allegro vivace冒頭にはティンパニの強打のイッパツ有り。 大地をしっかり踏みしめながらも、怒涛の如く流れていくAllegroはベルリンフィルの一大デモンストレーション。380小節からバスを強調しつつ猛然と加速。 Molt vivaceでの弦楽器の嵐も凄じく、509、519小節の二分音符を四分音符に改変し、短く切り上げ前進感を強調していました。 凄まじいダイナミックレンジと音響美。音を極限まで磨きぬいた特別大吟醸のような演奏でした。 今回聴いたのはドイツグラモフォンのダブルジャケット豪華国内盤LP。 1970年代はじめのころの地方のレコード店には、チャイコフスキーの交響曲第5番といえば、ムラヴィンスキーかこのカラヤンの演奏のどちらかが必ずありました。 当時中学生だった私にはとても手が出ないシロモノでした。(ちょっとトラウマとなっています。) 音は艶やかで豪華、ダーレムのイエス・キリスト教会での典型的なグラモフォンの音。 (2012.02.21) |