・ レニングラードフィルハーモニー管弦楽団 (1975年5月13日 東京文化会館 ライヴ録音) ムラヴィンスキー2度目の来日時の録音。日本ムラヴィンスキー協会の私的録音をムラヴィンスキー夫人の許可を得てALUTUSがCD化したものです。 ステレオ録音とはいえ個人の私的録音の類なので状態は貧弱ですが、演奏は見事なものです。 今のところ発売されているムラヴィンスキーの同曲録音中最速の演奏です。 第一楽章、Allegro con animaの緊張感漂うppp、120小節前後のクレシェンド・デクレシェンドのひとつひとつに一個の有機体として指揮者と同化するオーケストラは相当な聴きもの。ピアニシモの美しさ、170小節からの第2主題の優しい歌も印象的。 244、246小節の付点2分音符の膨らませを極端に強調していました。300小節からのトロンボーンの付点8分音符の押し付けつけるようなアクセント付加。365小節から次第に加速していきます。488小節はインテンポ、508小節からの減衰が顕著 第二楽章冒頭の息を詰めるかのような弦楽合奏の集中力は貧弱な録音からも伝わってきます。13小節めからテンポを速めAnimandoで大きく揺れていきます。自由に歌うホルンには大きなヴィヴラートをかけていました。 45小節のTempoTでの第1ヴァイオリンが入る一瞬の間の緊張感は凄いものです。 クラリネットソロが出てくるModerato con animaに入るまでの4小節間の延ばしのみの部分での小節ごとの色の変化もお見事。95小節のsfppのトロンボーンとチューバの強烈なアクセントは衝撃的。 108小節のTempoT間が異常に長いと思っていたら、ピアニシモの音がノイズに埋もれていて聞こえなかっただけのようです。 142小節のフォルテシモの入りは間はなし。くどさを避けたのかもしれません。 153小節のffffは力みの無い響きで晴れ間が広がったような効果を演出。 第三楽章はバレーのように優雅な洗練されたワルツ、72小節の早いパッセージの完璧さは凄すぎて笑いがでるほど。226小節の加速なし。 第四楽章は力の抜けた速めの冒頭開始、強い意思で確実、ティンパニが聞こえないのはマイナスです。シャープにオケは滑空、Allegro vivaceの入りも気づかないほどのスムースさ。一定の速度と音量アクセントのフォルテシモも刺激的。 30小節の木管楽器と弦楽器の悲しげな表情はまさに疾走する悲しみです。219小節のホルンは弱めとし、クライマックスの幅は少な目、最後の拍手はカットされていました。 音楽の流れが実に自然でフィナーレのAllegro vivaceのさりげない加速など見事。大きな流れの中の時折聴かせるフォルテシモも効果的でした。 70年代のステレオとはいえ、音場はふらつきヒスノイズが大きくピアニシモはかなりノイズに隠れています。録音が良ければムラヴィンスキーのチャイコの5番の中でベストスリーに入る演奏です。 (2012.08.10) |